熱く盛り上がる夏の高校野球。各地で熱戦が繰り広げられているが、あらためて高校野球史に残る“夏の選手権・地方大会”の激闘を振り返ってみたい。
■2014年夏・石川大会決勝
星稜 9対8 小松大谷
5年前、高校野球史に残る激闘といえば、まずはこの1戦だろう。8対0、小松大谷の8点リードで迎えた9回裏、ドラマが待っていた。
星稜は小松大谷のエース・山下亜文(巨人)を攻め立て、2点を返すとここで山下の足がつり降板。勢いに乗った星稜は手を緩めず、さらに2点を返すと岩下大輝(ロッテ)の2ランホームランで6対8に。ノーアウトで6点を返してしまった。
こうなるともう止まらない。小松大谷は2アウトまでこぎ着けたものの、同点、逆転は時間の問題だった。わずか20分で天国から地獄へ、地獄から天国へ。小松大谷の目立ったミスは振り逃げの後逸のみ。引き締まった戦いの中で起きたミラクル。100年に1度の奇跡だろう。
しかし、ドラマは終わらない。翌2015年の夏・準々決勝の同カードも語り草だ。星稜の3点リードで迎えた9回裏、今度は小松大谷が4点を奪って「サヨナラ返し」。小松大谷の下口玲暢主将は試合前のジャンケンで勝ち、後攻を選択。端からやり返すつもりだったという逸話も残っている。
■1998年夏・秋田大会決勝
金足農 17対16 秋田商
昨夏の甲子園であらためて全国的に名を上げた金足農。実は秋田高校野球史上に残る“生還者”でもある。
1998年夏、恐ろしい逆転劇を起こしている。決勝にたどり着いた金足農だが、猛打自慢の秋田商打線につかまり、5回裏には一挙12点を許し、5回終了時点で6対16と大差をつけられた。
そもそも金足農が6点を先制しており、それを秋田商がひっくり返しただけでも「ドラマ」なのだが、ここから金足農のミラクルがはじまる。7回表にタイムリーで2点を返して、8対16。8回表にランニング満塁本塁打が飛び出し、12対16。そして9回表には、2死三塁から3安打を重ね、敵失、押し出し四球でついに17対16と大逆転を果たしてしまう。
PL学園との死闘、そして昨夏の旋風。甲子園でも爪痕を残してきた金足農だが、やはり何かを「持っている」伝統校なのだ。
■2003年夏・福井大会1回戦
敦賀気比 5対5 大野東(延長15回引き分け)
敦賀気比 3対3 大野東(延長15回引き分け)
敦賀気比 6対1 大野東
タイブレーク制が本格導入され、再び脚光を浴びたのは、2003年夏の敦賀気比と大野東の死闘。1回戦とはいえ、まさに伝説的だろう。
まずは緒戦。アップセットに闘志を燃やす大野東が食い下がり、4対4で延長戦へ。11回表に大野東が1点を勝ち越すも、敦賀気比もソロホームランで追いつく。ついに延長15回再試合にもつれ込んだ。
そして、翌日も両軍ともに譲らず、3対3、延長15回引き分け。なんと再々試合が決定した。雨天コールドを除けば、史上初の再々試合である。
雨天中止での中1日での再々戦。結果は敦賀気比が勝利したものの、大野東もコールド決着を許さず、計39回、8時間42分を戦い抜いた。
文=落合初春(おちあい・もとはる)