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甲子園アルプス新時代の“狙い撃ち”はももクロ? 「高校野球と吹奏楽部」最新事情

 各地で代表校が決まり、甲子園での決戦も刻一刻と迫ってきた!

 全国の舞台で活躍したいと願う球児たちと同様、全国デビューを前に最後の調整で忙しい日々を送っているのが、アルプススタンドから声援を送る応援団だ。

 甲子園の応援、といえば、PLや智辯学園の「人文字」、沖縄代表校の「指笛」や「エイサー踊り」など、ユニークな応援も数多く存在するが、どの高校にも共通するのが「吹奏楽部」による演奏。そこで今回は、高校野球を盛り上げてくれる影の主役「吹奏楽部」の最新事情について掘り下げてみたい。

高校野球でも「あまちゃん」ブーム?


 高校野球の応援曲といえば、智辯和歌山の『アフリカン・シンフォニー』や天理の『天理ファンファーレ』など、強豪校の演奏する曲が全国に普及し、夏の定番の音色になってきた歴史がある。

 また、『鉄腕アトム』『ポパイ』『ルパン三世』『タッチ』など、アニメの主題歌が定番となりやすいのもご存知の通り。そんな中、今夏の応援に関して<「あまちゃん」演奏、相手暴投…じぇじぇじぇー>(2013年7月18日読売新聞)という新聞記事があった。

 花巻東vs久慈の一戦。『あまちゃん』のロケ地・岩手県久慈市にある久慈と、注目高である花巻東の試合だったこともあって話題を集めた。この報道以外でも、ブームを受けて全国的に『あまちゃん』の主題歌が応援歌に使われている、といった話がネット界隈では話題になっているのだが、実際のところはどうなのだろうか?

 そこで、現役吹奏楽部との交流も深い『みんなのあるある吹奏楽部』の著者・オザワ部長に話を聞いた。



『あまちゃん』人気は本当?


「確かに『あまちゃん』を演奏している学校はいくつかあるみたいなんですが、現役の部員たちに聞いてみたら、まだまだ少ないのが実情みたいですよ。高校生は放送時間的に『あまちゃん』見られないですからね」とはオザワ部長の弁。だとすると、来年のセンバツのほうが使用頻度は増えているかもしれない。

では、応援ソングの本当のトレンドは?


「今年からの新傾向は“ももクロ”と“ボカロ曲”ですね。ももいろクローバーZの『怪盗少女』や『サラバ、愛しき悲しみたちよ』を演奏している学校が増えているようです。特に『怪盗少女』は“狙い撃ち”という歌詞が応援にピッタリだとか。その他、ボカロ曲『千本桜』、SEKAI NO OWARIの『RPG』、 GReeeeNの『オレンジ』『桜color』などを演奏している、という声を聞いていますよ」

 ももクロ、というのが実に高校生らしい。実際これまでにも、『サウスポー』『夏祭り』『パラダイス銀河』など、当時流行した曲や人気アイドルの曲が甲子園で流れ、現在まで受け継がれてきた歴史もある。ももクロの曲も10年後、甲子園の定番になっているのだろうか。

◎『タッチ』のテーマに隠されたジンクスとは?
 吹奏楽部ならではの「高校野球応援あるある」についても聞いてみたところ、よく話題になるのが以下の「あるある」であるという。

・野球部だけでなく、自分たちも相手校の吹奏楽部と戦っているつもり。
・実際、トランペットがハイトーン(高音)で戦うこともある。
・相手校に吹奏楽部の応援が来ていないとき、こちらだけ演奏するのは少し申し訳ない気持ちになる。
・試合に勝っても、応援で負けたと感じたときの微妙な気持ち…。
・「甲子園で『タッチ』を演奏すると優勝できない」というジンクスがある。etc.

 甲子園応援曲の定番『タッチ』にそんな恐るべきジンクスが!?

 調べてみると、「甲子園で優勝できない」とまではいかないが、『タッチ』の作者・あだち充の母校・前橋商(群馬)では、「演奏すると負ける」というジンクスが本当に存在し、ずっと『タッチ』のテーマを封印していたというから驚きだ。

 その封印を解くキッカケとなったのが、前橋商が出場した2005年夏の甲子園。初戦の熊本工戦にあだち充も応援に駆けつけたのだが、前橋商はジンクスのために応援曲は『タッチ』抜き。逆に相手が何度も演奏するというアベコベ現象に。この試合を境に、「うち(前橋商)こそ演奏しないとおかしい!」と、ジンクスを乗り越えようという機運が高まったという。

 果たして、2007年夏に前橋商が甲子園に戻ってくると、遂に『タッチ』のテーマが鳴り響いたのだ。あだち充の神通力か。

 ちなみに、今年の「熱闘甲子園」(テレビ朝日系)の番組ポスターを描いているのがあだち充。なんだか「甲子園で優勝できない」というジンクスもそろそろ破られそうな予感がする。

 オザワ部長によると、野球応援の楽曲選びで重要になるのが、「幅広い年齢層が応援に参加できるかどうか」であるという。だからこそ、流行り廃りはあれど、やはり定番曲が好まれて演奏され続け、それが夏の音色として全国に響き渡るのだ。

 みんなで一緒に声をからして応援すること。それもまた甲子園の楽しみ方のひとつだ。今年の夏は、そんなアルプススタンドにも注目してみてはいかがだろうか。


文=オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。また「幻冬舎WEBマガジン」で実況アナウンサーへのインタビュー企画を連載するなど、各種媒体にもインタビュー記事を寄稿している。ツイッター/@oguman1977

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