6月23日、谷元圭介(日本ハム)が楽天戦で球団史上4人目となる通算100ホールドを達成した。谷元は今でこそ貴重な戦力で、1億円プレイヤーにもなったが、その歩みは苦労の連続だった。
中部大在籍時に愛知大学リーグのベストナインに選ばれるなどの活躍を見せたが、167センチの低身長がネックとなり、ドラフトや有力な社会人野球チームから声はかからなかった。
医薬品卸会社のバイタルネットに入社後は、野球部といえども勤務時間はほかの社員と変わらず、給料も練習費用で消えてしまうため心が折れそうになったという。
そんな谷元が2008年の日本ハムの入団テストに合格して、同年のドラフト7位指名を勝ち取った。これは本人の努力もあるだろうが、同じ低身長のかつての守護神・武田久の成功例が日本ハムにあったからかもしれない。
プロ入り後は日本ハムの強力ブルペン陣の一角として1軍に定着。勝ちパターンでも、ビハインドの展開でも、走者を背負った場面でも、イニングまたぎでも、常に安定した投球を見せ、まさにユーティリティ投手のお手本となっている。
2012年のシーズン途中から、チーム事情により先発に転向。ローテーションの谷間での先発や、リリーフとの併用といった難しい状況でも黙々と仕事をこなした。
2014年に再び中継ぎに固定されると、52試合の登板で防御率1.59。以降、3年連続で50試合以上の登板を果たしている。
昨季、日本ハムは日本一に輝いた。レギュラーシーズンの優勝決定試合と、クライマックスシリーズ第5戦の9回のマウンドには、ともに大谷翔平が立っていた。特にCSでは、「3番・DH」でスタメンだった大谷のDHを解除してリリーフに。日本人最速となる165キロを叩き出してファンの度肝を抜いた。
その流れを受けての日本シリーズ第6戦。8回に日本ハムが大きく勝ち越し、9回は温存していた大谷が締めるかと思いきや、最後のマウンドには谷元があがった。
この起用には、万が一第7戦にもつれ込んだ場合のために大谷を取っておくという保険の意味合いがあったかもしれないが、指揮官の谷元に対する信頼の表れともとれる。今でも栗山英樹監督は、「走者を背負った場面では迷いなく谷元。だって度胸があるもん」と語る。
指揮官から絶大な信頼を寄せる谷元。使い勝手が良すぎるゆえに、今日は何回を任されるのか予想もつかない!
文=サトウタカシ (さとう・たかし)