試合前練習は、「バッティング練習」(ホーム球団→ビジター球団)、「シートノック」(ビジター球団→ホーム球団)という流れで行われる。
開門直後にスタジアムに乗り込むと、だいたいホーム球団のフリーバッティングが行われているタイミングだ。
目の前に広がる光景に感動しつつ、「おー、○○選手がベンチにいる!」とか「○○選手は一人で地道にアップやってるなー」などとつぶやきながら、一通りフィールドを見渡したら、バッティングケージのなかで打席に立つ選手をよく見てみよう。
フリーバッティングでは、その打者の好不調を確認することができる。また、逆方向への打球に専念している選手もいれば、入念にライン際にバントを転がす選手もいる。
その日の相手チームの先発に合わせて左右の打撃投手が配置されているフリーバッティング。打席に立つ選手は相手チームをビビらせる意味もあって気合が入っている。ボールが遠くに飛ぶかどうかだけでなく、見どころは随所にあるのだ。
シートノックは、まず外野手のゴロ捕球からのセカンド送球(バックセカンド)で始まり、最後にバックホーム返球で選手がベンチにあがってくる。
本塁へのレーザービーム送球は見せ場だが、二塁、三塁、本塁へ返球する際に中継に入る内野手のキレからも、チームの士気を感じることができる。
外野手がベンチに戻り、最後に「美技の競演」を見せてくれるのが内野シートノックだ。まずは各ベース上の選手による「ボール回し」から始まる。
そして各ポジションからの一塁送球、ダブルプレーと進む。捕球からの送球の速さ、難しいゴロを難なく処理するプレーにはほれぼれとすることでしょう。ときに打撃重視の外国人一塁手などが見せる緩慢な二塁送球はご愛嬌だが、基本は美技のオンパレードである。
そして、バックホームで内野手がベンチに戻ると、最後に残った捕手にノッカーがキャッチャーフライを打ち上げる。このキャッチャーフライは、ノッカーを務める各コーチの技量が見られて面白い。
個人的には、試合前練習が入場料の4分の1くらいを占めていると思えるほどに、楽しめるものだと思っている。
文=元井靖行(もとい・やすゆき)