高校野球はU-18ワールドカップが開幕。夏の甲子園大会の余韻も冷めやらぬ間に、日本代表メンバーも連日試合を行っている。
そのメンバーに、1年生ながら名を連ねる早稲田実業の清宮幸太郎。チーム内の上級生と生活を共にするなかで、いつの間にか「キヨミー」という愛称でよばれているという。
高校球児につけられた愛称の元祖といえば、「怪物」ではないだろうか。その規格外の才能から、作新学院の江川卓は「怪物」とよばれた。その後も、横浜高の松坂大輔が「平成の怪物」とよばれたように、高校生ながら飛び抜けた実力や活躍をみせる選手を、怪物とよぶパターンが定着した。
1977年夏の甲子園大会で、1年生ながら東邦高を決勝まで導いたエース・坂本佳一は、細身の身体で投げ抜いた初々しさから、子鹿という意味の「バンビ」という愛称がついた。また 1983年の春・夏に4番エースとして甲子園出場を果たした池田高の水野雄仁は、その風貌も相まって「阿波の金太郎」と呼ばれた。
野球漫画の登場人物から、愛称を頂戴するケースもある。有名なところでは、浪商(現・大商大浪商)の香川伸行は「ドカベン」とよばれ、また高知商の中西清起は「球道くん」というニックネームがつけられた。
愛称がつけられるためには、女性ファンの人気も不可欠だ。三沢高の太田幸司は「コーちゃん」旋風を巻き起こし、清宮の先輩でもある早稲田実業の荒木大輔は「大ちゃん」とよばれ、甲子園ギャルから黄色い声援を浴びた。
近年では、「ハンカチ王子」が有名だ。清宮や荒木と同じ早稲田実業の斎藤佑樹が、ピンチにも動じることなく、甲子園のマウンド上でポケットからハンカチを取り出し、そっと汗を拭くことからついた愛称は、野球ファン以外も知るところとなった。
実はこの「ハンカチ王子」は、ネット上から生まれたという説が有力だ。甲子園を観戦する一般ファンが、ネット掲示板などで実況している最中に、自然発生したニックネームだという。振り返れば確かに、マスコミ側が「佑ちゃん」へとシフトしようとした感もあった。
これから高校球史に残る愛称は、ネット上で書き込みを続ける草の根コピーライターたちによって生み出される可能性は高い。
マスコミよって繰り返し使われる「○○のイチロー」や「××のダルビッシュ」といった、ありきたりなニックネームは食傷気味だ。普段は高校野球をそれほど観ない、素人ファンだからこその絶妙なニックネームが誕生する、そんな時代になっているのかもしれない。