投打に故障者が続出しながら、それでもパ・リーグのペナントレースをリードしているソフトバンク。この現状から、解説者やファンは「選手層が厚い」と口を揃える。たしかに、戦線離脱した主力選手の穴を埋めるように若手が台頭し、ゲームを作っているシーンはよく見かける。
ただ、毎年の目玉として獲得しているドラフト1位の選手は、全員が活躍しているわけでもない。直近5年のソフトバンクのドラ1はすべて投手で、以下の選手が名を連ねている。
■ソフトバンク・2014年以降のドラフト1位指名選手
2014年:松本裕樹(盛岡大付高)
2015年:高橋純平(県岐阜商高)
2016年:田中正義(創価大)
2017年:吉住晴斗(鶴岡東高)
2018年:甲斐野央(東洋大)
(※年はドラフト指名年)
今季、ルーキーながら150キロ台中盤の快速球を武器にセットアッパー、クローザーとしてフル回転する甲斐野央こそ目立っているものの、あとのメンバーは、ドラ1の期待に全面的に応えているとは言い難いのがリアルな状況だ。この4人の現在地を探ってみる。
5年目となる松本裕樹は、おもに先発として起用されているが、デビュー以来の通算成績は27試合4勝7敗、防御率4.32。
高卒5年目ということは、大卒の新人と同年齢。それを考えれば、そろそろまとまった結果がほしいところだ。今季は5試合に先発し1勝1敗という成績だが、勝敗がつかなかった3試合のうち2試合は5回で自責点2、7回2/3で自責点2とゲームは作っており、ローテーションの一角に食い込みそうな気配はある。
66番は、かつての大エース・斉藤和巳のナンバー。それを5年目も背負っているということは、入団当時も今も大きな期待がかけられている証にほかならない。
肩の故障や度重なるフォーム変更などもあって、昨季までの3年間、1軍登板はわずか1試合。2軍でも納得できる数字を残せていなかった高橋純だが、今季はセットアッパーとして覚醒。5月に1軍に昇格すると、そこから21試合に登板し、防御率1.26と好投。ソフトバンクの苦しいブルペンを支えている。
このきっかけとなったのが、昨年11月、真砂勇介や周東佑京とともに参戦した、プエルトリコでのウインターリーグだ。そこでは、9試合に登板し防御率7点台と打ち込まれることも多かったが、気持ちは、自身の持ち味である「強いストレート」への原点回帰にたどり着いたようだ。今季は、球速が150キロ台中盤まで戻ったことが、躍進にもつながっている。
3球団が競合したドラ1は、デビューからの3年間で「もしかしてハズレだった!?」との評価が定まりそうな苦境にあった。そんな状況からのV字回復。これまでの借りをまとめて返しそうな雰囲気は漂っている。
田中正義の名前の漢字は、親会社のボス・孫正義と同じ「正義」だが、「まさよし」ではなく「せいぎ」読む。そこから「ジャスティス」のニックネームが定着。創価大時代の2015年にはプロの若手も牛耳った大卒のドラ1ということで、即戦力の期待もかけられていたが、肩の違和感などもあってまだ結果を出せていないのが現状だ。
昨季は開幕から1軍で、リリーフとして10試合に登板し、13回2/3を投げて防御率8.56。交流戦を前に2軍降格となり、再昇格はなかった。
今季は7月9日に1軍登録、翌10日の西武戦に登板。同点の5回2死一、二塁の場面で起用され、外崎修汰に勝ち越しタイムリー三塁打を浴び、続く6回には2四球を与え、1死一、二塁となったところで降板といいところなし。その1週間後には2軍降格となってしまった。
150キロ前後のストレートがあり、ファームでは13回2/3で防御率1.32と、内容はよくなっている。このままでは終われない。
3回連続で抽選に敗れた末に指名したドラ1の吉住晴斗。1年目の昨季は3軍戦での登板のみ(25試合で3勝9敗、防御率6.69)。今季は2軍での登板も増え、7月25日終了時点で12試合に登板し、20回1/3で防御率5.31。高卒2年目ということで、まだまだ体力強化も必要な段階。すぐに1軍ということはなさそうだ。
とはいえ、高校時代に最速151キロをマークしており、将来性は十分。7月11日に行われたフレッシュオールスターゲームでは三者連続三振を奪い、成長ぶりをアピールした。目が離せない存在ではある。
文=藤山剣(ふじやま・けん)