ドラフト候補選手の魅力をたっぷりとお伝えする「2016ドラフト候補怪物図鑑」。
今年のドラフト会議での上位指名が濃厚な目玉選手9名と、来年のドラフト会議で要注目の3名を4週間に渡って徹底解剖。新人ライターの山岸健人さんが、『野球太郎』持木秀仁編集長に根掘り葉掘り質問しまくります。
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今回は抜群のコントロールとカーブを武器に、アメリカ大学代表チームの打者から三振の山を築いた柳裕也投手(明治大)に迫る!
山岸:柳投手はどんな投手でしょうか?
持木:柳投手は明治大の先輩でもある野村祐輔投手(現・広島)のようなタイプです。コントロールが抜群で、スピードで勝負するタイプではありませんが、ストレートも最速は150キロを記録しています。でも、武器は何といってもカーブですね。
山岸:最速150キロよりもカーブが武器なんですね!
持木:はい。まずカーブでストライクを取ってカウントを有利にして、優位に立って、ストレートやカットボールで打者と勝負します。
山岸 いいところばっかりですね。
持木 でも少し心配な点もあります。
山岸:どこか不安な要素が?
持木:コントロールがよく安定感もあって、調子の波は少ない投手ですが、逆にそのあたりが仇にならないかと。
山岸:どういうことですか?
持木:最速150キロといっても球の勢いで抑えるタイプではないので、プロの長丁場で調子が落ちてコントロールやキレを欠いたときに打ち込まれないか心配ですね。
山岸:この夏に行われた日米大学野球では11回2/3を投げ、19奪三振、無失点と大活躍。アメリカチームの打者から面白いように三振を奪いましたね。
持木:柳投手は、空振りよりも見逃し三振を多く取るイメージが強いです。打者の手が出ないコースにビシッと投げられるので。
山岸:日米大学野球のときの柳投手のカーブを例に挙げて「外国人選手はカーブが得意ではない」という記事を目にしたことがあります。やはり、カーブも三振の山を築いた要因でしょうか?
持木:でしょうね。アメリカでは、カーブは投げるのが一番難しい変化球といわれるくらいですから。
山岸:スライダーやスプリットが全盛になってカーブを投げる投手が減りましたが、最近になってカーブが再評価されている気がします。
持木:ふた昔前ぐらいは「変化球=カーブ」でした。以前はスライダーが武器という投手の方が珍しかったんじゃないでしょうか。
山岸:それは意外です! てっきり、スライダーも昔から多くの投手が投げているものだと思っていました。
持木:たしかに稲尾和久投手(西鉄)に代表されるように、昔から投げられてはいたと思います。ただ、現在のように猫も杓子もスライダーという感じではありませんでしたね。昔はスライダーもカーブと認識されていたのかもしれません。「横のカーブ」と言われていたのが、実はスライダーだったとか。
山岸:一緒くたにされていたのかもしれないと。
持木:今は逆に「縦」「横」とスライダーのあり方が広くなっていて、「それ、カーブじゃん」と思うような球がスライダーと表示されたりしますよね。
山岸:縦のスライダーとフォークもどっちなんだろうって思います。
持木:まあ、そういう意味で言うと、柳投手はわかりやすい「縦の抜いたカーブ」を投げる投手ですね。40代より上の世代の人にとっては「ああ、昔いたなあ、こういう投手」という懐かしさを感じさせてくれる投手だと思います。
山岸:でも、30代以下の世代にとっては新しくもあり。
持木:言うならば「新古典派」ですね(笑)。
山岸:そういう話を聞いていると最近のプロ野球では珍しい投手なんですね!
持木:そうかもしれませんね。緩いカーブで見逃しのストライクを取るスタイルのピッチャーは、最近はほとんどいないですからね。
山岸:それよりも最速何キロ! という言葉がもてはやされがちです。
持木:今は150キロを超えるようなストレートや、力を入れて投げる変化球が主流です。力を抜いてポーンと放った球でストライクを取る価値観が薄まっているのかもしれません。
山岸:そのなかで柳投手には「新古典派」のスタイルを貫いた投球で、プロの打者を打ち取ってもらいたいですね!
武器はカーブ。今では珍しくなったスタイルの柳投手を、ドラフト1位候補にリストアップする球団は多い。1年目から1軍の先発ローテーションでの活躍も大いに期待されている。来年、プロ野球を見た際に「珍しいタイプの投手だな」と感じたら、そのマウンドには柳投手が立っているに違いない。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)