華々しいプロ野球の世界。グラウンドでのプレーヤーはもちろんだが、「野球関連」の仕事でプロ野球を支える人たちもいる。前回は少しニッチなプロフェッショナルの仕事を紹介した。今回は間口を広げて「球場でのお仕事」を中心に紹介したい。
前回は匠の技を持つ阪神園芸を紹介したが、ほとんどの球団がグラウンドキーパーのアルバイトを雇っている。アルバイトはトンボ掛けや土などの運搬がメインで、野球経験者の大学生であれば朝飯前。面接でも野球経験の有無を聞かれるため、採用は経験者が有利だろう。
ちなみに日本ハムの東京ドーム開催では、5回終了後のグラウンド整備時に「YMCA」が流れる。グラウンドキーパーは黙々とトンボ掛けをしているが、サビになった瞬間にトンボを振って踊り出すのが定番。熟練のスタッフになると、外野まで駆けていきファンを盛り上げる。
試合中は裏での待機時間も長く、某球場でバイト経験のある筆者の友人は、選手たちのさまざまな「裏の顔」を見たと語っていた。たとえば、マウンドに向かう前にタバコを吸い溜めするリリーフ投手など……。
審判にボールを渡したり、プロテクターやバットを引いたり、ファウルグラウンドで待機するボールボーイやボールガールも実はアルバイトがほとんど。採用には実技試験もあり、ボールガールはともかく、ボールボーイは硬式野球経験者が優遇される。狭き門に見えるが意外にも人数は多く、シフトも融通が利くらしい。
球場の“華”であるビールの売り子。12〜13キロの樽を担いで、スタンドを昇り降り、ビールがなくなれば、階段を昇り降りして補給へ。その上、いつも笑顔で接客となかなか過酷なアルバイトである。
しかし、基本給+歩合のため、トップクラスの売り子になると時給は5000円以上になるという。経験者に話を聞くと、キャバクラと勘違いされているオジサンたちも多いため、いなし方も鍛えられるそうだ。
またビールメーカー各社にとって、採用の「好み」があり、メーカーによって系統が分かれているらしい。
このあたりのバイトは派遣が主。配置次第で苦楽が決まる。立っていることが苦でないなら、楽なバイトに見えるが、たとえばチケットのもぎりだと、入場が一段落すると、今度は客席のゴミ回収に回るなど、そこそこの足腰の力がないと辛いバイトかもしれない。
球場にもよるが、試合終了後の客席清掃、ゴミ分別なども仕事に含まれることが多く、そこも大仕事となる。
ファウルボール注意の笛を鳴らす係は、屈指の好環境として知られている。試合をずっと見ていられることから、野球好きにはもってこいだ。もちろん、試合前の座席拭きや試合後の清掃はついてくるが……。なお、壁に寄りかかっていたり、試合に集中しすぎて笛を鳴らさなかったりすると大目玉を食らう。
キャンプ地に行けば一目瞭然だが、多くの球団が球団スタッフとは別に球拾いなどの練習補助のバイトを雇っている。トス上げやバッティングピッチャー、ブルペン捕手など、バイトが務めることも。本格的な野球経験が必要なため、ほとんどの採用が中学硬式・高校野球関係者のコネだが、たまに募集を出している球団もあるので興味のある人は要チェック。
テレビ中継の補助スタッフもバイト求人でよく見かける。試合前後の機材運搬とカメラマンの飲み物やお弁当の買い出しの雑務が中心。なかなか割りのいいバイトらしい。
またレアな仕事は、スコア記入。実況席に陣取り、スコアブックや球数などを正確に記入。実況の要請に応じて、前打席の結果や現在の球数などを伝える。高校野球の地方大会でもよく地方局が募集を出している。
近年ではツイッターでの試合実況を募集しているメディアもあり、バイトの幅は広がっているようだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)