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元メジャーにキューバ人も!ハイレベルな助っ人が集まるBCリーグ・武蔵ヒートベアーズに注目だ

☆メジャーで勝ってきた投手がBCリーグに参戦!

「プレーの場を与えてもらって、むしろハッピーだよ」


 埼玉・熊谷にある地方球場の古ぼけたロッカールームで、インタビューに答えてくれたのは、今年、ルートインBCリーグに加入した新球団・武蔵ヒートベアーズのベック・チャスン(白嗟承)だ。母国・韓国のプロ野球を経由せず、高校を卒業すると、1998年にマリナーズと契約。2004年にはメジャーデビューを果たし、2勝を挙げた。しかし、その後は伸び悩み、メジャーとマイナーを往復する生活。その彼の才能が花開いたのは2008年シーズン途中、パドレスにトレードされてからのことだった。新天地で彼は先発ローテーション入りし、6勝を挙げる。

 しかし、プロ入り以来、彼を悩まし続けたヒジ痛が再発すると、パドレスを解雇される。独立リーグやベネズエラでプレーを続けたのちに、ヒジの手術を決断。1年のリハビリを経て、2011年の秋にオリックスのテストを受験すると見事合格した。しかし、結果を残すことができず、ここでも実力を発揮できないまま、2012年の1シーズン限りでリリースされてしまう。

 ここ2年はリハビリに費やしていたという。この春、満を持して、沖縄に飛び、日本ハムのテストを受けたものの、結果は不合格。それでも自分の可能性を信じ、独立リーグの世界に飛び込んだという。

 すでに34歳。MLBやNPBの大舞台でのマウンドからは7年も遠ざかっている。それでも、もう一度トップリーグの舞台に立ちたいという思いでプレーしている。

 とはいえ、世界の最高峰を味わった身にとっては、日本の独立リーグの環境は過酷なものではないだろうか?

「いや、気にならないね。まあ、ここ数年プレーしてないので、それは仕方がないと思っているよ。何事にも我慢が必要だからね」

 メジャー通算16勝の右腕は、薄暗いロッカールームで、しつこくまとわりつく蚊に閉口しながらも、前向きに語ってくれた。

☆再び日本にやってきた元メジャー

 そのベックの横で響いていたのが、スペイン語の会話だった。武蔵ヒートベアーズには2人のラティーノ(中南米出身)が在籍している。そのうちの1人、ファウティノ・デロスサントスは、アスレチックスで2年プレーし、主にリリーフで3勝2敗と成績を残している。2012年には、東京ドームで行われたMLB開幕シリーズのメンバーとしても来日。このとき、公式戦では登板はなかったものの、対阪神のオープン戦で1回1失点ながら日本のマウンドも体験済みだ。

「あの時の日本の印象はとてもよかったね。故郷のドミニカでは、リセイとエスコヒードっていう、メジャーで言えば、ヤンキースとレッドソックスみたいな人気チームに所属していたんだけど、東京ドームでは、もっと多くのファンの前でプレーできたからね。とてもいい環境と思ったんだ」


 この時の来日経験が、再び日本の地を踏んだ大きな理由になっているのは間違いない。彼もまた、故障を抱えており、ヒジにメスを入れた経験をもつ。また、それに伴う薬物使用による出場停止などもあり、昨年はどのチームとも契約を取れなかった。オフにベネズエラのウィンターリーグで1試合、2/3イニングだけだが久々にマウンドに立った彼は、現役復帰を決め、エージェントにBCリーグを紹介してもらい、再び日本の土を踏んだ。

 同じ日本といっても、メジャーリーガーとして来日した時の環境と、独立リーグでのそれには雲泥の差があるだろう。しかし、ドミニカのアカデミーからメジャーまで這い上がってきた彼にとって、そんなことは大きな問題ではない。

「日常生活も大丈夫さ。日本の方がチャンスは多いからね」

 確かに層の厚いアメリカ球界よりも、日本の方がアピールの場は多いかもしれない。ベックともども元メジャーリーガーたちは、「ここで活躍して、まずはNPB」と口をそろえる。

☆さらなる成功を日本に求めたロドリゲス

 キューバ人のライド・ロドリゲスもNPBを目指してやってきた1人だ。2008年から2011年までカージナルスのマイナーでプレーしていた彼は、当時の同僚である広島のロサリオの勧めで来日を決めた。


 彼は2005年に亡命を果たしている。「よりよい生活、より多くの機会」を求めて、アルゼンチンからニカラグアを経由してアメリカに渡ったという。キューバでは月12ドルの月給は、ルーキーのマイナー契約でも2000ドルに跳ね上がり、50万ドルの契約金も手にできた。彼の「賭け」は大成功したといえる。ここ数年は、独立リーグで月5000ドルを手にしていたが、プロとしてこれで満足するわけにはいかない。

「今の月給? 詳しくは言えないけど、上がってはいないかな(笑)。でも日本の方がチャンスは多いからね」


 実績十分の彼らだが、プレースタイルの違いにまだ適応はできていないようだ。数字を見る限りは、まだ、独立リーグでも圧倒的な実力を見せつけているというまでには至っていないが、アメリカでなかなかチャンスをつかめない「大物」たちが、プレーする新生球団・武蔵ヒートベアーズに注目するのもおもしろいかもしれない。


■ライター・プロフィール
阿佐智(あさ・さとし)/1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。野球記事以外の仕事も希望しているが、なぜかお声がかからない。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)

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