まず前回のおさらいとして、「勝ち星」のベスト&ワースト3を再確認してみる。
■勝ち星ベスト3(都道府県)
1位 大阪:189勝
2位 愛知:166勝
3位 兵庫:165勝
■勝ち星ワースト3(都道府県)
1位:新潟:3勝
2位:佐賀:6勝
3位:富山:7勝
このような順位だったが、「勝ち星」を高校で見てみるとベスト3は以下のようになる。
■勝ち星ベスト3(学校)
1位 中京大中京(愛知):55勝
2位 東邦(愛知):51勝
3位 県岐阜商(岐阜):48勝
3位 PL学園(大阪):48勝
都道府県でのランキングで2位に23勝差をつけて首位に立っていた大阪のPL学園を抑え、愛知の中京大中京と東邦がワンツーフィニッシュ。3位には大阪のPL学園と並んで岐阜の県岐阜商がランクイン。高校で見ると東海地区が他を圧倒する結果となった。
東海勢は、センバツの優勝回数でもトップ3にランクインしており、ただ強いだけでなく、とことん強い(中京大中京と東邦の優勝4回で1位。県岐阜商は優勝3回で3位)。
野球どころながら、出場枠が2つしかない東海地区。その狭き門をくぐり抜けた自信とプライドが、甲子園で爆発しているのかもしれない。
この結果を見ると、今センバツの東海代表・静岡と至学館に俄然期待したくなるが、果たしてどうなるか。
一方、新潟が都道府県での勝ち星で最下位に甘んじているのは、新潟代表として初めて甲子園の土を踏んだ1958年の新潟商から2003年出場の柏崎まで、約半世紀に渡って6連敗を喫していたことが大きな理由だと考えられる。
ただ、2006年に出場した日本文理が2勝を挙げたことで、新潟勢の機運は上向いている。
一方、ワースト2の佐賀は神埼と鳥栖が2校同時出場を果たした2001年から初戦5連敗中と苦しい状況。ここ5年、10年の間にはワースト3位の富山を含めた逆転現象が起こるかもしれない。
前回は「優勝回数」と「優勝率」にまつわるデータも紹介した。今回は「4強」「8強」のランキングを調べてみた。このデータからは「どれだけ安定した強さを発揮しているか」がわかるはずだ。
■4強ベスト3(都道府県)
1位 大阪:20回
2位 兵庫:19勝
3位 愛知:14勝
■8強ベスト3(都道府県)
1位 兵庫:32回
2位 大阪:25回
3位 愛知:22回
「4強」では「勝ち星」ランキングと同じく、大阪が1位。2位、3位も「勝ち星」ランキングトップ3の兵庫と愛知が順位を入れ替えた格好となった。「8強」を見ても、「勝ち星」ランキングのトップ3が顔を並べている。
準決勝まで勝ち進んで「4強」に入るためには3勝を挙げなければならないので、「勝ち星」の多い都道府県が上位を締めるのは当然といえば当然。「4強」入りが10回以上、「8強入り」入りが20回数えるのも、この3県だけだった。
このトップ3のなかでも安定感が光るのは兵庫。「4強」ランキングでは大阪に1位を譲ったが、「8強」ランキングでは2位の大阪に7回もの差をつけて首位に立っている。
ここ数年は奮っていないが、過去15年間の兵庫勢の成績を見ると2008年の東洋大姫路と2009年の報徳学園と2年連続で8強入り。2003年から2005年にかけては東洋大姫路、社、神戸国際大付が3年連続で8強入りを果たしている。
今センバツは神戸国際大付が7年ぶり、報徳学園が3年ぶりに出場。報徳学園は春2回、夏1回の優勝を誇る名門校だ。4強、8強と言わず頂点まで駆け上るかもしれない。
ワーストランキングは、4強に進出した高校が少ない県が多いため順位づけにさほどの意味を見いだせないが、少ないなかでも特徴的な動きが見えたのは岩手と富山。
岩手は1984年の大船渡、富山は1986年の新湊と4強には1回ずつ入ったことがあるのだが、8強入りは1度もない。両県とも2つと勝つと勢いに乗って「もう1つ」勝って準決勝まで駆け上がるようだ。
なお、岩手勢は2009年に花巻東が準優勝。このときはさらに勢いに乗り、4強も突破している。
今センバツでは、富山からは高岡商が7年ぶり、岩手からは昨夏の甲子園で8強入りした盛岡大付が4年ぶりに春の舞台に帰ってくる。しかも、両校は1回戦で対戦することになった。初戦の勝利で弾みをつけ、どこまで勝ち進めるか注目したい。
前回以上にマニアックな見方になったが、いかがだっただろうか。甲子園はゆかりの土地だけではなく、少し見方を変えて近くのライバル地区に目を向けたり、似た傾向の地区を探してみると、より感情移入できること請け合いだ。
今回の記事がそのきっかけとなれば、うれしい限りだ。
文=森田真悟(もりた・しんご)