東邦の優勝で幕を閉じたセンバツ。平成最初の優勝校が平成最後の栄冠にも輝く劇的な結果となった。しかし余韻に浸る間もなく、各地区で春季大会が開幕。新たな戦いが始まった。
注目選手、注目校、高校野球界の動向を追いかける週刊野球太郎の「高校野球最前線」。今回はウワサのあの選手からスタート!
先のセンバツに出場せずとも、現在の高校野球界でもっとも注目されているのが佐々木朗希(大船渡)。それもそのはず、「夢ではない」と言われていた大台の160キロを早くも超えてきたからである。
“事件”が起きたのは、侍ジャパン・U18代表研修合宿。その紅白戦で初回にいきなり163キロを捕手のミットに叩き込んだのだ。
女房役の藤田健斗(中京学院大中京)が、思わず「怖かった」と漏らすほどの衝撃。キャッチした手に裂傷を負ったという情報もあったが、今季のメジャーリーグを見渡しても、佐々木より速いボールを投げたのは2人しかいないようなので無理もない話である。
センバツでも好投し、ドラフト候補として佐々木同様に注目される奥川恭伸も「(佐々木は)高校卒業までに170キロに到達しそう」と口にするなど、ファンだけでなく、ライバルも楽しみな様子だ。
センバツとほぼ時を同じくして開催されたのが、四国、九州地区各県の春季大会。ドラフト候補たちが「俺たちのセンバツ」と言わんばかりの熱戦を繰り広げた。
なかでも好投手・宮城大弥(興南)、鶴田幸多郎(小林西)が、決勝でも相手打線をしっかりと打ち取って、チームを優勝に導いた。この活躍を最後の夏、その先のドラフトへとつなげたい。
また、愛媛では優勝した今治西とセンバツに出場した松山聖陵が四国大会へ向けた順位決定戦を行った。ここでは松山聖陵が8対5で逆転勝ちを収め、センバツ出場組の意地を見せた。しかし、今治西も中盤まで優位に試合を進めており、実力は伯仲している。
四国大会を経て、夏までの間にどれだけチーム力を高められるか。まさに勝負のときが始まる。
「高校球児=坊主頭」。当たり前のような空気が漂っているが、坊主頭を嫌って高校では野球をしない、と考える中学球児は今も昔もいる。そんな風潮を打破するべく、ある学校が1つの試みを推し進めている。
その一つが新潟明訓の「長髪奨励」。島田修監督がコーチの相談を受けて決断。あだち充の漫画『H2』に登場する木根竜太郎のような極端な長髪こそいないものの、選手によって髪型は実にまちまち。
ただ坊主頭をよしとする風潮が主流ではあるので、負けたときに髪型を揶揄される恐れもある。とはいえ、手をこまねいているだけでは若年層の野球人口減少は解決しないので、こういった試みがいい方向に向かうことを願う。
4月から新年度が始まり、新たなスタートを切った高校球児たち。暖かくなればますます春季大会も盛んになっていき、シーンのテンションは高まるばかりだ。
そしてその先にある「令和最初の甲子園優勝校」の座は、果たしてどのチームがつかむのか。来週以降も『高校野球最前線』で、その栄冠への行方を追っていきたい。
文=森田真悟(もりた・しんご)