『野球太郎』が巨人の補強ポイントに挙げたのは「先発投手候補」、「若い二遊間選手」、「フレッシュな大型外野手」、「東京ドームに強い投手」、「チームを活性化する独立リーガー」だった。「先発投手候補」から順に指名結果を見ていこう。
今季は高卒3年目の田口麗斗がブレイク。10勝を挙げ、チームの勝ち頭になった。エースの菅野智之は勝ち星こそ恵まれなかったが、エースにふさわしい活躍。マイコラスはケガの影響で1軍に上がったのは6月だったがそれ以降は昨季同様の安定した投球を披露した。
昨季は大不振に陥った内海哲也も9勝を挙げ、復活の兆しが見えた。
だが昨季、ルーキーながら活躍した高木勇人は2年目のジンクスに勝てず。ドラフト1位の桜井俊貴はケガと不振で1軍の登板はわずか1試合に終わった。
また、先発ローテのイスは埋まりきっていない。そこに加わる「先発投手候補」の指名は必要不可欠だった。
今年は、近年の「独自路線の指名戦略」とは違い、目玉候補に競合覚悟で入札。その結果、田中正義(創価大)を外し、佐々木千隼(桜美林大)も外してしまった。
今回のドラフトで指名した投手のなかで、来季の先発候補になりそうなのは3位指名の右腕・谷岡竜平(東芝)と4位指名の左腕・池田駿(ヤマハ)の2人。
谷岡は最速150キロのストレートと打者に向かっていく強いハートが魅力。まだ20歳と若く球速も上がり続けているので、仮に1年目から戦力になれなくても期待できる。伸びしろは十分だ。
池田は、ドラフト後に行われた社会人野球日本選手権の優勝投手。最高の手土産を持って巨人に入団する。
池田の武器は最速148キロのストレートに加え鋭いスライダー、チェンジアップ。四球を多く出すなどムラもあるが、調子がいいときの投球は抜群。日本選手権決勝という大舞台でチームを優勝に導いた物怖じしない性格も魅力だ。
ここ10年近く、巨人は二塁のレギュラーを固定できていない。今ドラフトでは「外れ外れ1位」で大学ナンバーワン遊撃手の吉川尚輝(中京学院大=写真)を指名した。
吉川は遊撃が本職だが、二塁も守れる。フィールディング、スローイングは鮮やかで守備範囲も広い。走っては50メートル5秒7の俊足だ。
やや打撃が課題と指摘する声もあるが、アドレナリンが出るようなしびれる場面で発揮する天才的なパフォーマンスは素晴らしい。今春の全日本大学野球選手権では中京学院大の初出場初優勝に大きく貢献した。
今季は、ルーキーの山本泰寛が少ない出場機会をモノにして、守備・打撃両面で爪痕を残した。来季は山本や吉川らのレギュラー争いが予想されるが、その争いがハイレベルになるほど、得られる相乗効果は大きい。
大型外野手候補という点では育成8位で松澤裕介(香川オリーブガイナーズ)を指名。しかし、すでに24歳とフレッシュとは言い難い。松澤に関しては補強ポイントD「チームを活性化する独立リーガー」にタイプので、そこでくわしく紹介したい。
東京ドームに強い投手という点でも谷岡が当てはまる。昨年、今年と都市対抗野球で先発登板し、通算12.1回を投げて自責点はわずか1。東京ドームとの相性はいい。
今季から巨人は3軍制度を敷いた。昨年同様、今回のドラフトでも多くの育成選手を指名した。そのなかで異彩を放つのが前述した育成8位指名の松澤だ。
松澤は昨年も巨人から育成選手として指名を受けたが、ドラフト後に左手手指関節靭帯損傷が発覚。治療に時間を要すため泣く泣く入団を辞退した。それから1年。再び巨人から大砲候補として指名された。
四国アイランドリーグ1年目の今季は10本塁打を放ち、打点王にも輝いた。今季は故障の影響もあったため昨季の打撃にはやや劣ると見る向きもあるが、それでも「異例の2年連続指名」を勝ち取った。いかに巨人が松澤に魅力を感じているかがわかる。
育成のなかでは最下位の指名となった松澤だが、昨年のドラフトで育成最下位指名だった長谷川潤は今季、3月に支配下選手に昇格。1軍登板も果たした。この流れに乗って、松澤も早期の支配下登録を実現し、チームを活性化させてほしい。
【総合評価】70点
田中、佐々木と続けてくじを外した巨人だが、「外れ外れ1位」で吉川を指名。二塁のレギュラーが長く固定できていない巨人にとっては価値のある指名だったと感じる。
即戦力として早々にバックアップでも貢献できるが、吉川は向こう10年、レギュラーをはる存在になれる可能性が高いだけに、この指名はとても大きい。
左腕の池田は先発として期待したいが、勤続疲労を隠せない山口鉄也に代わる、左のリリーフとしての起用も面白い。
また、将来性という点では5位で高田萌生(創志学園)を指名。課題は多いが、今年の高校生のなかで最速となる154キロのストレートを投げる能力を、プロでさらに伸ばしたい。数年後に先発ローテーションを担うのも夢ではない。
7位で指名した身長2メートル超え右腕のリャオ・レンレイ(台湾・開南大卒)は荒削りだが、長身から投げ込まれる最速152キロのストレートは大きな戦力になる可能性を感じさせる。
リャオ・レンレイは、今年のドラフトきっての「隠し球」&「ロマン枠」指名といっていい。
競合入札に挑み当たりクジを引き当てることはできなかったが、まずまず、補強ポイントに沿って即戦力、将来性ともに期待できる選手を指名できたドラフトとなった。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)