大げさではなく、向こう10年、オリックスの4番は安泰かと思われた。しかし、そこから昨年までの5年間、ホームランは2014年の24本が最高。他の4年は20本にも届かず、打率、打点も2010年を超えることは一度もできなかった……。
その間、代名詞でもあったノーステップ打法から、すり足や一本足へと変えてみたり、はたまたグリップの位置を上げ下げしてみたりと、試行錯誤の連続。とにかく悩んでいる姿が目に付いた。
今季も開幕から不振で、4月4日に2軍落ち。ウエスタンでも8試合で打率.207(29打数6安打)とイマイチだったが、「前で振りすぎていた」部分を修正したという。それが奏功したのか、4月29日に1軍に戻ってからは人が変わったかのように打ち始める。5月1日に今季第1号を放つと、5月だけで9本塁打。1割台だった打率も、5月末には3割を超えた。
6月に入っても勢いは衰えず、6月5日の神宮でのヤクルト戦では、5打数4安打で2本塁打を含む5打点。あわやサイクルヒットという大暴れだった。6月7日終了時の打率は.321。規定打席に到達していないためランクインはしていないが、数字だけ見ればリーグ2位。12本塁打もリーグ3位タイとなる。
結果を出した試合のT−岡田のコメントは「センター中心に」、「コンパクトなスイングで」、「ボールを引き付けて」、「無心で振った」といったキーワードが並ぶ。これらから回答を導くなら、バッティングの基本に立ち返った、となる。バットでとらえる精度を高めればアベレージも上がり、打球の角度によってはホームランにもなるということだろう。
そんな好調なT−岡田だが、課題があるとすれば、左投手対策か。6月7日終了までで、右投手が打率.402に対して左投手は.156と打てていない。本人は苦手意識はないようだが、6月7日の中日戦でも、ルーキーの小笠原慎之介に対して、空振り三振、四球、セカンドゴロと快音は聞かれなかった。
西武の菊池雄星、ソフトバンクの和田毅といったパ・リーグを代表する左腕を、T−岡田が先頭に立って攻略できれば、なかなか浮上のきっかけが掴めないチームにも勢いがつく。まだ6月。キャリアハイの成績も残せそうなT−岡田の今後に期待だ。
文=藤山剣(ふじやま・けん)