4月23日、カープを支えた衣笠祥雄さんがこの世を去った。2215試合連続出場の世界記録(当時)を打ち立てた「鉄人」。引退後もいつも優しい語り口でポジティブな解説も大人気だった。
プロ野球界きっての明るさと優しさで愛された男。その衣笠さんが語る現在のカープ、そして次代のレジェンドを紹介したい。
広島で「鉄人」に近づきつつあったのは丸佳浩だろう。2013年5月20日から連続試合出場を続け、700試合の連続出場を記録していた。本来であれば、次代の鉄人として紹介するはずだったが、4月28日の阪神戦で右太ももを負傷。登録抹消となってしまった。
丸自身もこだわりを持っていただけにさぞ悔しいことだろう。しかし、そんなときこそ、衣笠さんの言葉を思い出してほしい。
「本当に自信をつけたのはプロに入ってから15年目ですね」
1979年、衣笠さんは春先から極度の不振に陥り、ついにはスタメン降格。10年連続の連続試合出場が途切れる危機が訪れたが、悔しさをバネに見事に復活。初の日本一の立役者になった。西本聖(当時巨人)から死球を受け、左肩甲骨を骨折しながら出場を続けたのもこの年だった。
この苦難の年を乗り越え、初めて「野球選手になった」と思えるようになったそうだ。それが32歳のシーズンだった。現在、丸佳浩は29歳。連続出場の記録こそ止まってしまったが、不屈の精神でケガを乗り越え、また鉄人への道を歩んでほしい。
衣笠さんは鈴木誠也にも「レギュラーで出る以上は試合に出続けろ」という言葉をかけている。昨季からケガに苦しむ若き主砲だが、丸とともにこの危機を乗り越え、新たな広島のレジェンドになってくれるはずだ。
ただひとつ、衣笠さんが心配した現在のカープの敵は、やはり「FA」だった。
衣笠さんの背番号といえば永久欠番の「3」だが、若手時代の1974年までは「28」を背負っていた。それが『鉄人28号』のイメージが重なり、「鉄人」の愛称を生んだのだ。
現在、背番号28は投手の床田寛樹が背負っているが、思い返せば、2014年オフに阪神を事実上の戦力外となり、広島に出戻りした新井貴浩が1年間背負ったのが「28」だった。
実は…というと大変失礼だが、昨季終了時点で新井は通算2178安打(歴代20位)、1279打点(歴代18位)を記録しており、いずれも現役トップ。通算2543安打(歴代5位)、通算1448打点(歴代11位)を記録した衣笠さんに迫りつつある。
衣笠さんが引退した時の年齢は40歳。今年で41歳を迎えた新井はある意味ではレジェンド超えの未知の領域に突入したことになる。現在は左腓腹筋挫傷で離脱しているが、ゴールデンウイークを目処に実戦復帰の予定。現時点でもレジェンドの域に到達しているが、ここからもうひと踏ん張りあれば、新たな「鉄人」になれる可能性もある。
「本音でいうと、死ぬまでプロをやりたい」
野球を愛し続けた鉄人・衣笠祥雄さんの足跡を追い、次なるレジェンドの道へと進むカープ戦士たち。「3連覇すれば本物」。衣笠さんの願いを叶えることができるだろうか。
文=落合初春(おちあい・もとはる)