中日2位 石川 翔・人をマネするのが嫌いな高校屈指の151キロ右腕
2017年プロ野球ドラフト会議で、総勢82名の選手が指名された。
2018年からのプロでの活躍に期待したい。
週刊野球太郎では、ドラフト会議の直前にインタビューした指名選手18名を特集!
プロで活躍するために戦ってきたドラフト候補と、彼らの「真価」を最も熟知している監督さんを取材した貴重な「証言」をお届けします。
今回の指名選手
中日 ドラフト2位
石川 翔(いしかわ・しょう)
179センチ82キロ/右投左打。1999(平成11)年12月14日生まれ、東京都板橋区出身。中学時代は板橋リトルシニアに所属し、主に外野手。青藍泰斗高でも野手としてプレーしていたが、2年春から投手に転向。関東屈指の逸材と注目された。今夏は左足首ねんざを負いながら最速151キロをマーク。甲子園は未出場ながら将来性は高く、ドラフト1位候補と目される。
宇賀神修監督の証言
★最初の印象
中学3年時に初めて見ました。「球が速い」と聞いていて、確かにキャッチボールは速いボールがきていたのですが、力任せに投げていてフォームにクセもあったので「時間がかかるかな」という印象でした。ただ、足が速くて肩が強くて打撃もいいので、野手として「中心選手になるだろう」と思いました。本人は投手を希望していましたが、ここまでの存在になるとは思いもしませんでした。
★投手転向を猛アピール
入学してから練習試合で登板したのですが、ストライクが入らず、その後は野手として使っていました。ただ、その後にヒザを手術して治療に時間がかかったので、野手よりも自分のペースで練習できる投手のほうがいいかもしれないなと。2年になる春先には3日続
けて打撃投手を買って出たりして、「本当にピッチャーがやりたいんだな」と思いましたね。
★ケガと付き合うために
30年以上監督をやっていますが、運動能力と筋力は一番。ただ、ケガが多くて追い込んだ練習ができていません。最後の夏は大会前に左足首をねんざして、本来の投球ができませんでした。彼の力はこんなものではない。今後ケガをしないためにも、投手としての身のこなしを覚えてほしいです。
★これから
投手としての経験が浅いせいか、投球にムラがあります。イニングごとにムラがあって、夏の作新学院戦も一気に3点を取られて負けました。逆に言えば、そこが今後伸びる余地があって楽しみな部分だと思っています。
監督さんプロフィール
宇賀神修[うがじん・おさむ]
1953(昭和28)年生まれ、栃木県出身。鹿沼農商高〜駒澤大。大学卒業後、1976年4月から葛生(現・青藍泰斗)高に赴任して監督に就任。1990年夏にチームを甲子園初出場に導いた。2013年には育成功労賞を受賞。
本人の証言
★ケガとの付き合い
中学時代に右ヒザの分離症の手術を受けて、高校では左ヒザの分離症の手術を受けました。肩も何度か痛めたり、右足首にボールが当たって打撲、疲労から左股関節を痛め、今夏は大会前の練習試合でぬかるんだ地面に足をとられて左足首をねんざ…とケガが絶えませんでした。ただ、不可抗力のケガも多かったですし、肩を痛めたことでケアの方法を勉強できました。今はインナーのトレーニングを欠かさずやっています。
★栃木大会・作新学院戦
今夏は左足首をねんざしていたので、足首をテーピングで固定して、痛み止めの注射を打って投げていました。準決勝の作新学院戦では6回くらいに痛み止めが切れて、ただ立っているだけでも骨の奥がズキズキ痛みました。負けてしまったのでチームには申し訳なかったですが、悪いなりに最低限の投球はできたと思います。
★極度の負けず嫌い
意識している存在は作新学院出身の今井達也さん(西武)。去年の夏の甲子園で注目されて、悔しかったですね。藤平尚真さん(楽天)も高卒1年目にプロ初勝利を挙げて、うらやましいというか、悔しさがありました。1学年上ですけど、同じ野球をやっている者同士なので刺激を受けています。侍ジャパンU−18代表も選ばれるつもりで練習していたんですけど、選ばれなくて悔しかったです。
★敏腕コーチとの出会い
2年秋の大会後から高橋薫さん(元・専修大監督)がコーチになって、メンタル面で指導いただいたことが大きかったです。高橋さんは「絶対にマイナスなことを口にするな」と言っていて、それで強気の投球ができました。
★これから
最近、プロの試合をよく見るようになって、現実感が湧いてきました。球が速くない投手でも10勝以上勝てるのは、やはり腕が振れて、キレがあるからだなと思います。早くプロの1軍で活躍したいですが、自分に足りない部分は多いです。球のキレ、器用さ、試合の流れを考える力…。時間をかけて力をつけないといけないと思っています。人のマネをするのは嫌いなので、むしろ人にマネされる選手になりたいですね。
球種に関する証言
ストレート 139〜151キロ
カーブ 115キロ前後
スライダー(タテ・横)128〜133キロ
チェンジアップ 125〜129キロ
カットボール 130〜135キロ
本人
三振を奪いにいくのはストレートとタテのスライダーです。カットボールは今夏の作新学院戦のために隠していた球種で、左打者を打ち取った球はほとんどこれです。インコースに投げ込む感触を得ました。(本人)
フォームに関する証言
監督
入学した頃は軸足が折れたり、クロスステップしたり、力任せに腕を振っていた印象でした。2年秋くらいから見違えるほどまとまってきました。
本人
もともとグラブ側の腕を体重移動の際に体の内側に入れ過ぎていて、かえって左肩の開きが早くなって右肩に負担がかかるフォームでした。肩を痛めてからグラブ側の腕をヒジから出すイメージに変えたところ、体全体が連動できるようになって、よくなりました。
グラウンド外の素顔
中学時代は「悪さもしました」というヤンチャな一面もあるが、高校では「環境が人を作る」というモットーを掲げる宇賀神監督のもとで更生。宇賀神監督も「日常生活で怒ったことはない」と語る。本文中にもあるように人をマネることが嫌いで、目標とする選手はいない。母がフィリピン人のハーフという出自も「普通の人にはない個性なので、むしろうれしい」とポジティブに受け止めている。
本稿は雑誌『野球太郎 No.024 2017ドラフト直前大特集号』(2017年9月23日発行)に掲載された人気企画「ドラフト候補&指導者マンツーマン・インタビュー」から、ライター・菊池高弘氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。
取材・文 菊池高弘
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