守備でグラウンドに立つ9人の選手のうち、最も複雑な動きが求められるのは遊撃と二塁のいわゆる「二遊間コンビ」だろう。
それゆえに、器用さと敏捷性が不可欠で、名遊撃手、名二塁手と呼ばれる選手たちは、小柄なのが定番。前後左右にフットワークよく動いて打球を処理するためには、体があまり大きくないほうが適しているのかもしれない。
最近では、2013年から4年連続ゴールデン・グラブ賞に輝いている身長171センチの菊池涼介(広島)、身長172センチの今宮健太(ソフトバンク)が象徴的な存在だ。
少し前でも、宮本慎也(元ヤクルト/身長175センチ)、井端弘和(元中日ほか/身長173センチ)、小坂誠(元ロッテほか/身長167センチ)、立浪和義(元中日/身長173センチ)など、小柄な名二遊間は挙げればキリがない。
小柄な名手が目立つだけに、逆に「大型二遊間」の存在感は抜群。その筆頭が身長186センチの坂本勇人(巨人)だ。昨季は、遊撃手としてはセ・リーグ初となる首位打者を獲得。そして、自身初のゴールデン・グラブ賞も受賞した。WBCでの活躍も記憶に新しい。
守備面では、井端コーチとの出会いが大きかった。2014年からチームメートとなり、昨季からはコーチと選手という間柄になったが、以前よりも安定感が増した印象を受ける。
井端コーチは特にスローイングに関して「しっかりと間を取って投げるように」と指導したという。捕球から送球へは一連の動作で行われるが、その動作が雑にならないように、間を取ることで送球の正確さがより高まるという考え方だ。
守備の安定感は、当然、打撃にも相乗効果をもたらす。「名手の陰に名コーチあり」は普遍の法則なのだ。
辻発彦新監督からキャプテンに任命された浅村栄斗(西武)も、身長182センチと二遊間にしては大柄だ。
元々は遊撃だったが、スローイングの不安定さが払拭できなかったこともあって、二塁へコンバートされた。それが奏功したか、二塁ではたびたび好守を見せている。昨年のゴールデン・グラブ賞の投票でも、パ・リーグの二塁手部門では3位。受賞した藤田一也(楽天)とは17票差だった。
なお、西武の遊撃の開幕スタメンにはルーキーの源田壮亮が抜擢されたが、こちらも身長179センチと小さくない。
ちなみに、辻監督も現役時代はゴールデン・グラブ賞8回の名二塁手で、身長は身長181センチ。小柄なイメージを持つ人もいるかもしれないが、それほど動きが軽快で俊敏だったのだろう。
WBCでは菊池がいたため、DHでの出場がメインとなったが、山田哲人(ヤクルト)も忘れてはいけない。スリムな体形だけに大柄なイメージはないかもしれないが、身長は180センチと小さくない。
2年連続トリプルスリーという前人未到の大記録を達成した山田だが、守備へのこだわりも強く、昨年の開幕前の目標にゴールデン・グラブ賞も掲げていたほど。セ・リーグの二塁には菊池という絶対的な存在がいるだけに簡単ではないが、いつか牙城を崩したいところだ。
1960年代から70年代にかけて、阪急には二塁手としても活躍したダリル・スペンサーという身長190センチ、体重90キロの大型内野手がいた。野村克也とタイトル争いを繰り広げたほどの強打者だった。坂本、浅村、山田もともに、打撃面でも秀でたものがある。体格がもたらすパワーもその一因だろう。
この先、こういった強打の選手が増えていけば、いつの日か大型二遊間が当たり前の時代がくるかもしれない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)