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7季ぶりに日大が神宮に帰ってくることが決定!【東都大学野球リーグ1部2部入替戦・速報号】

 大学選手権は早稲田大が優勝し、予定通りに終わったことで、東都大学野球リーグ1部2部入替戦は6月15日から行われた。

 昨秋は、2部優勝校として出場した専修大が入替戦を制して1部に昇格。そして、今春は1部優勝という46年ぶりの“昇格即優勝”を成し遂げたことは記憶に新しい。先の大学選手権でも優勝した早稲田大と互角に渡り合った。専修大のようにジャンプアップをする可能性は、1部最下位・拓殖大にも、2部優勝・日本大にもあるはずだ。そのためには、まず、ここで勝たなくてはならない。さて、その結末は……。

●7季ぶりの1部に王手! 拓大投手陣を崩したバットと足

 拓殖大の先発は左腕の尾松義生(4年・明徳義塾高)。日本大は木村光彦(3年・習志野高)が託された。

 試合が動いたのは3回。日本大はエラーとヒットで出した走者を、犠打で1死二、三塁とした。続く山崎晃大朗(4年・青森山田高)のタイムリーを放ち、流れるような攻撃で2点を先制する。さらに京田陽太(3年・青森山田高)がヒットで繋ぐと、今度はダブルスチール。持ち前の強打と機動力で拓殖大バッテリーをゆさぶった。

▲先制となる2点タイムリーを放った山崎

 拓殖大はここで早くも尾松を諦め、稲葉武昭(3年・呉商高)にスイッチ。稲葉が後続を連続三振に封じて、追加点は許さなかった。

▲尾松は3回途中降板。2番手の稲葉にボールを手渡す

 そして5回、追いつきたい拓殖大は、2者連続死球から犠打を決める。するとリーグ2位の高打率をマークした鈴木孝昌(4年・山梨学院大付高)が犠牲フライを打って1点差に迫る。6回には4番・加藤敦之(2年・藤井学園寒川高)が左翼ポール際に同点ソロを放って、試合を振り出しに戻した。

▲2打数2安打2打点の鈴木。1番打者として奮闘

 だが、終盤の粘りがひときわ印象強い日本大は、直後に猛攻を仕掛ける。

 ヒットと四球で1死満塁とすると、拓殖大3番手・赤嶺祥吾(1年・糸満高)から長沢吉貴(1年・佐野日大高)が走者一掃の二塁打を放つ。仲村恒一監督が「スタート、スライディング、ベースランニングもスピードがある」と絶賛する長沢は送球間に三塁を陥れる好走塁。その後、二塁ゴロ時に完ぺきなスタートを切って6点目を奪った。この回には、さらに1点を追加し、7−2と拓殖大を大きく突き放した。

▲長沢の好走塁でダメ押し

▲7回1失点の粘投を見せた木村光彦

 7回から木村をリリーフした藤本鈴也(4年・日本航空高)は、ランナーを背負いながらも得点は許さずに逃げ切った。11安打7得点と効率のいい攻撃で快勝した日本大が先勝した。1部復帰に王手をかけた。

★試合後コメント
◎日本大・仲村恒一監督


「尾松くんの牽制ではそう簡単に走れませんからね。相手にプレッシャーをかけるのが持ち味のチーム。2月くらいからずっと積み重ねてきました。大きいのを打てるバッターはいませんが、繋いで、足も使っていく形です。

 投手は2部リーグで一番劣ると思っています。規定投球回数に到達したのも一人だけで、試合を作れる投手が何人かいるという感じ。内外野の守りは悪くないです。

 まだやっと半分。明日も勝って初めて意味が出てきますので、緩めず明日もいいプレーができるようにしていきたい。油断さえしなければ、負けるチームではありません」

拓殖大・鈴木孝昌二塁手


「序盤はいいゲームができましたが、エラーが絡んで相手の流れを切れませんでした。うちは守りからバッティングに繋げるのにミスが出てしまった。

 (2安打だが)リーグ戦で状態が上がってきて、いい感じに逆方向に打てるようになりました。監督から『左打者はセンターから左、右はセンターから右に』と言われて意識をしたら、外をしっかり叩けるようになりました。

 (最下位確定から入れ替え戦までは)技術うんぬんより、チームで声を出したり、決まり事を守るとか結束力を高めてきました。負けて少し落ち込んでいますが、明日に切り替えよう、と声をかける選手もいました。明日は先制したいです。そして、守って勝つ野球をしたいです」

●4年生だけが知る1部へついに復帰!

 この日の先発は日本大が東範幸(2年・履正社高)、拓殖大は飯野徹也(4年・作新学院高)。1部残留に後がない拓殖大は、マウンドを4年生右腕に託した。

 飯野は立ち上がり、テンポよく三者凡退に打ち取ると、その裏に攻撃陣はヒットと2四球で2死満塁のチャンスを作る。だが、得点には至らず三者残塁。

 やはり、流れは先勝した日本大にあった。2回表に、連打と犠打で1死二、三塁と好機を作ると、塚田好顕(4年・日大山形高)がタイムリーを放って2者が生還。前日のリプレイを見るかのような攻撃で先制点を挙げた。

▲塚田のタイムリーで2者が生還

 拓殖大は4回裏、先頭の杉原賢吾(3年・明徳義塾高)が頭部に死球を受ける。

▲頭部死球で一時はベンチに下がるが、グラウンドに戻ってきた杉原

 そこから、1死一、三塁のチャンスを作ると、打席には井田学(4年・前橋育英高)。放った打球は、左翼手の前へ落ちようかという当たり。左翼手がスライディングして一度はグラブへ収まったか!? のように見えたが、捕球できておらず、ボールは後ろへ転々(記録はタイムリーヒット)。1点を返し、一打チャンスで、期待の鈴木を迎えたが、二塁ゴロ併殺打……。ここで“あと一本”が出ないのが、試合の流れなのだろう。

▲この日、唯一の打点を挙げた井田

 日本大は、5回表に松下拓司(4年・龍谷大平安高)のタイムリーで再び2点差に。さらに6回には2死二、三塁からエラーで2点を追加。このワンプレーが大きく、いまの日本大の野球を表現していた。「ゴロとなった瞬間にホームを突こうと思った」という二塁走者の塚田は、二塁手がゴロを少し弾き、ボールが手につかない間に一気に本塁まで駆け抜けた。全力疾走と、常に次の塁を狙う姿勢が導いた好走塁だった。

 5回途中よりリリーフした原優平(3年・千葉日大一高)が、ピンチを招きながらも味方の好守もあって得点は与えず、試合は9回裏に。

 1死から老平匡秀(3年・藤井学園寒川高)のこの日、3安打目となる二塁打で出塁を許すものの、後続を打ち取って試合終了。

▲好救援で1部復帰を実現した原

▲1部復帰に沸く日本大の選手たち

 念願の1部復帰を手にした歓喜の輪には、涙を抑えきれなかった選手もいた。そんな中でも、幸田健斗(4年・徳島商高)は、冷静に最後の挨拶をしっかりするよう促し、スタンドに感謝の意を伝えた。

★試合後コメント
◎日本大・仲村恒一監督


「(胴上げはしなかったが)前回は胴上げしましたが、今回は1部で勝ってから、胴上げしようと言いました。

 (二塁ゴロのエラーで2者生還)全力疾走を徹底してきました。常にランナーを付けた練習をし、手を抜かず、フライを上げても全力で走りました。監督やコーチが言わなくても、緩めることを許さない雰囲気が自然とできてきて、試合でも安定した力を出せて、10勝できたのだと思います。もっと徹底させて、形にしたいですね。

 昨秋以降、1部で勝つことを目指してやってきた。ビックリするようなボールを投げる投手はいませんが、きっちり試合を作ってくれた。謙遜ではなく、うちが2部で一番投手力が弱いと思っています。

 去年は柱がいて、野手が頼ることもありました。接戦を落として優勝できないことが続き、それを打開しようと話をした。そのためにはバットを振る数を増やすしかないと。2月からリーグ戦中もずっと振らせてきました。選手の努力を認めてやりたいです。それに、幸田のキャプテンシーは大きいですね。人をリードする力があって、それを4年生が支えて下級生がついてくる。一番いい形です」

日本大・塚田好顕一塁手

「(二塁手のエラーで二塁から生還した場面では)普通のセカンドゴロでしたが、アウトの打球でも気を抜かないように全力で走っていました。いつもやっていたことだから、あそこでも出たと思います。

 ホームランが自分のバッティングだと思って入学しましたが、周りにはもっと打つ選手もいるし、試合で使ってもらうようになって、自己犠牲やチームのためを考えるようになりました。ヒットじゃなくても点を取れるんだと気付きました。

 最終回の2アウトでは、うるっときましたが、終わってみたらホッとしました。1部に復帰しても、これまで積み上げてきた戦い方は変えずに、夏にいい練習をして、さらに質を高めたい。相手じゃなくて、自分たちのプレースタイルで臨みたいです」


■ライタープロフィール
山田沙希子(やまだ・さきこ)/東京都出身。早い時期から東都大学リーグの魅力にハマり、大学生時は平日の多くは神宮球場または神宮第二球場に通い詰めた、三度の飯より東都大学リーグが好きなライター。多くの東都プレイヤーの取材を通して、さらに東都愛は加速中。イベント「TOHKEN〜東都大学リーグ野球観戦研究会〜」でも活躍。

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