ストーブリーグの風物詩の一つと言えば、各チームの新外国人の補強。日本ハムは11月4日、前ヤンキースのクリス・マーティンとの契約合意を発表した。
栗山英樹監督も期待を寄せており、退団したマイケル・クロッタに代わる中継ぎ右腕として、活躍の場が与えられそうだ。
テキサス出身の29歳、203 センチの長身右腕は一風変わった経歴の持ち主。高校卒業時の2004年にタイガースから18巡目で、短大在学中の2005年にロッキーズから21巡目でそれぞれドラフト指名されるも契約を拒否。地元の独立リーグのチームと契約したが肩を故障して一旦は引退。5年近く家電倉庫で洗濯機や冷蔵庫などを並べる仕事に従事していたという。
しかし、休憩時間にキャッチボールをしていた際にマーティンの球の速さに驚いた同僚がプロチームのトライアウトを受けるように説得。見事に独立リーグのチームと契約して1シーズン投げた後、レッドソックスから声がかかりマイナー契約を結んだ。
その後、トレードで移籍したロッキーズでメジャーデビュー。2015年はヤンキースで24試合に登板した。
具体的にどのような投手か紹介していきたい。
ストレートの平均球速は153キロ前後とほぼメジャーリーグの平均値。それより少し遅い146キロほどのシンカーと133キロ程度のスライダーを織り交ぜてゴロを打たせるピッチングが持ち味だ。これはメジャー通算36.1イニングでゴロ率56.0%を記録していることからも見て取れる。
2014年は防御率6.89、2015年は5.66と防御率は思わしくないものの、これは両年とも打者有利な球場を本拠地としてプレーしたことにも起因しているだろう。実際に奪三振、与四球、被本塁打から計算した疑似防御率で、投手の真の実力を測るのに適していると言われるFIPではメジャー通算3.71と次第点の数字を残している。
マーティンのもう一つの特徴としては奪空振り率の低さが挙げられる。2015年のマーティンは5.6%で、これはリリーフとして20イニング以上投げた投手の中ではワースト3位。リリーフ投手のリーグ平均値の11.0%と比べて約半分だった。
しかし、三振が取れないというわけではなく、2015年は9イニングあたり7.84という数字を記録している。それに加えて、リーグの平均を上回る与四球率2.61を記録するなど、優れた制球力も持っている。長身と球速を考慮すれば、日本ではもう少し多くの三振を奪えるだろう。
イギリスのロックバンド、コールドプレイのボーカルと同姓同名でもあるマーティン。歌唱力は定かではないが、ブルペンに回れば日本ハムリリーフ陣の一角として今季限りで退団したクロッタの穴を埋める活躍が期待できる。
文=山崎和音(やまざき・かずと)
日本プロ野球はもちろん、メジャーリーグや各国の野球の試合を毎日観戦。さらにシーズン中は、高校野球の地方大会などにも足を運ぶ。複数の米ウェブサイトにも寄稿しているほか、海外の野球ファンとの交流も積極的に行っている。