プロ野球はポストシーズンへ突入した。最大の目標でもある日本一へ向け、熾烈な戦いを繰り広げている。ポストシーズンにクライマックシリーズが導入されて以降、レギュラーシーズン終盤まで順位争いが激しくなり、消化試合の数は飛躍的に減った。
ファンにとってはいいことなのだが、そのために、シーズン終盤にこれからのチームを担うであろう期待の若手を試す機会も消化試合同様に減った。しかし、機会は少なくなったものの「お試し」で結果を出し、翌年にブレイクした選手は存在する。
近年で「お試し」から翌シーズンに飛躍した野手といえば、吉川尚輝(巨人)がそうだろう。
巨人は昨シーズンの最終戦にドラフト1位ルーキーの吉川尚をスタメンに抜擢した。この試合で吉川尚は3安打猛打賞と結果を出した。そして、今シーズンは二塁のポジションを奪いとり、レギュラーに定着。8月からは骨折により登録を抹消されているが、大きく飛躍した1年だった。
投手では才木浩人(阪神)の名前が浮かぶ。終盤の2試合に登板し、勝ち負けはつかなかったものの、無失点で防御率0.00。手応えをつかんだ。迎えた今シーズンは先発、中継ぎとフル回転。22試合の登板で6勝(10敗)を挙げ、将来の柱となりそうなムードが漂っている。
吉川尚、才木のように今シーズン、「お試し」起用されたのは誰だろう。清宮幸太郎(日本ハム)は早くから1軍に昇格し、本塁打も放っているのでお試しの起用とは言い難い。他の選手を見ると野手陣ではまず、ドラフト1位の高卒・大物ルーキー2人がお試し起用として挙げられる。安田尚憲(ロッテ)と村上宗隆(ヤクルト)だ。
村上はチームがクライマックスシリーズ出場を争っているさなかに1軍へ昇格。初スタメンとなった9月16日の広島戦で初打席初本塁打と最高の結果を出した。その後、当たりは出なかったが本塁打のインパクトは十分。来シーズン以降のブレイクを予感させた。
一方、履正社高時代から清宮と比較されることが多かった安田も芽を出しつつある。8月訪れた初昇格時は結果を出せなかったが、その後はファームで力を蓄えた。9月下旬に再昇格を果たしてからは、初本塁打を放ちアピールを続けている。来シーズンは、まずはレギュラーを確保し、新人王を目指したい。
村上、安田はともに一発を期待できる主軸候補だ。しかし、1軍でスタメンを張るにはDHでない限り、打つだけではなく、最低限の守備力が必要になる。打撃、そして守備と課題はまだまだあるが、1軍での経験を糧に秋季キャンプ、オフシーズンを過ごしたい。そして、来春のキャンプではレギュラー争いに加わることを期待したい。
投手陣では高橋奎二(ヤクルト)がシーズン終盤に躍動した。勝てば2位が確定する大一番のDeNA戦で先発を任された高橋は、5回1失点8奪三振と好投。期待の新星として来シーズンの飛躍を予感させる。DeNAの主軸・筒香嘉智から3打席連続三振を奪ったことも大きな自信となったはずだ。
育成から這い上がってきた榊原翼(オリックス)も飛躍を遂げた。今シーズン序盤に与えられたチャンスでは1死も取れず5失点とプロの洗礼を浴びた。しかし、ファームでじっくり鍛え直して戻ってきた9月の終盤戦、先発として3試合に登板し17回を投げて2失点。勝ち星こそつかなかったが、来季の先発ローテーション争いに加わりそうな好投を見せた。
オリックスは西勇輝のFA権行使が濃厚と予想されている。もし西が移籍するならば、来シーズンの先発の枠はひとつ空く。その穴を埋めるような榊原の大ブレイクに期待したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)