吉川は広陵高時代に甲子園出場はなかったものの、2006年に高校生ドラフト1巡目で日本ハムから1位指名を受け入団。ちなみにこの年の高校生ドラフトは、言わずと知れた1988年度生まれの黄金世代。田中将大(ヤンキース)、前田健太(ドジャース)、坂本勇人(巨人)らを輩出した。
吉川も1年目から1軍出場を果たし、先発ローテーションの一角に定着。完封勝ちを含む4勝を挙げた。またその年の日本シリーズでは、中継ぎと先発で2試合に登板。勝利こそならなかったが、その存在感をアピールした。
2012年はダルビッシュ有(レンジャーズ)が日本ハムを去り、栗山英樹新監督が就任したチームの転機の年。ここで吉川が大ブレイクした。
4月に1438日ぶりの勝利を挙げると、その後も順調に白星を重ねてキャリアハイの14勝。防御率1.71でタイトルを獲得し、同年のMVPも受賞した。
ダルビッシュの穴を埋めてチームの危機を救った吉川。このシーズンが最も輝いた年といっていいだろう。
今シーズンは夏場まで先発ローテーションを守っていたが、不調により2軍落ちとなる。その後は守護神・マーティンの負傷もあってリリーフに転向。プロ初セーブを挙げたものの不安定な内容で、ポストシーズンでの出番はなかった。
先発マウンドでは素晴らしい立ち上がりを見せても2〜3巡目には相手打線につかまり、リリーフでは汗びっしょりで準備万端に見えてもすんなり1イニングを抑えることができず、結果的に悔いの残るシーズンとなった。
プロ入り10年目のシーズンを終え、区切りの年に新天地に移籍する吉川。環境が変わることで、再び輝きを取り戻してほしい。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)