岡本和真はスラッガーではない? 坂本再生は井端新コーチに期待! 巨人のドラフト放談
『野球太郎No.012』以来、毎号8ページに渡って掲載されている「スカウト的観戦者カルト座談会」。実際は掲載ページ数の何倍もの話し合いが行われており、ほぼ毎回4時間を超す激論が繰り広げられている。雑誌『野球太郎No.017』に収まりきらなかった、とっておきの「マル秘こぼれ話」を掲載していきたい。
※座談会は11月6日に行われました
☆社会人で揉まれ続けたメンタルが強かった高木勇人
――巨人の高木勇人が、シーズン序盤に活躍して、新人王候補と呼ばれていた時期もありました。座談会的には高木の「た」の字も出てこなかったと思います。ちょっとこう印象が違ったという感じですかね。
柳川 でも、結局、底力はなかったですよね。高卒2年目のときから見ていて、たしかに社会人7年目の25歳というラストチャンスで変化は見られた。それでプロに入って5連勝。でもその後、4勝10敗でしょ。まぁ、今年1年目で底が見えたっていう感じは……。
FGE 春先はどこも打線があんまり調子がよくないので、意外とポッと出てうまくいくというのは、あるっちゃあるんですけど。
蔵 連勝しているときはコントロールよかったんですよ。でも、夏場に入るとバテてきて、コントロールミスが増えてきました。そこで、打者が調子を上げてくるタイミングが重なると、対応できなくなっちゃう。活躍してしまって、研究されたので、もうバレてしまったような気がします。
yuki でも、度胸はありますからね。あの緩い球を思いっきり投げられる、ということで、もしかしたら……。あと、まだチームによって、高木を攻略できているチームとできていないチームがあるような感じがします。
――驚くようなキレのある新しい球種を覚えるのか、なにかに気づいて成長があるのか。
?梨 でも、ジャイアンツ打線が普通に打っていれば、もっと勝っていたんですけどね。
――防御率は3.19ですからね。いい意味で裏切ってくれた活躍だったかもしれません。
蔵 攝津(正/ソフトバンク)みたいに成功することもありますよね。やっぱり毎年候補と言われ続けてきた選手は、積み重なってきたハングリーさや気持ちの面では、他の候補よりも上ではないか、という気もしてきました。
▲高木勇人(巨人)
☆希望の光が見えた岡本和真の1年目
――高校生でいうと岡本(和真/巨人)ですね。座談会的には「スラッガーには見えない」という話をしてきましたが、プロでも実際にそういう感じになっていますよね。一応、1軍デビューして、ホームランも打ってはいるんですけれども。
蔵 意外とうまく対応できたな、という感じはします。
――対応できちゃう……というのは、飛距離出せるかというと……。
蔵 求めてる方向と違いますよね。
?梨 岡本は、対応力はあるかもしれないですけど、いまのままだとホームランが出る気配はないですよね。でも、アウトになったときもけっこう内容はいいんですよ。ヒットになるかどうかは紙一重って感じ。
蔵 逆にこういう打者は、“まず率が残って、試合に出してもらって、打席に立つ回数を増やして、プロの環境に慣れる”という過程でホームランが増えていけばいい。こんな考え方で育てたほうがいいかもしれませんね。「天性のスラッガー」ではないので。
yuki まずは試合に使われないと、ですもんね。
――2軍でもホームランは安樂(智大/楽天)から打った1本だけですからね。
蔵 強引に引っ張れるヤツじゃないとホームランは出ないですよ。粗くても完全に引っ張り込めるやつじゃないと。
FGE 逆に巨人の2軍にいる和田恋はそういうタイプです。個人的には岡本も率が低くても、ああいう風に引っ張るバッターになってほしかったです。でも、守りが足を引っ張らないようなので、いまのところはチームにとってはいいかもしれないですけど。
柳川 試合で使ってもらえる要素だもんね。それで守れないんじゃ、どんなに打ててもポジションも限定されるし、使われるチャンスは減るからね。
yuki まだ10何試合ですが、希望の光はこの1年で見えましたよね。
▲岡本和真(巨人)
――それに秋季キャンプではショートの練習をしたという話も。
?梨 ショートの練習をするといいんですよ。
FGE 2軍ではファーストとかサードの選手をセカンドで使うことはありますよね。オリックスの奥浪(鏡)がセカンドをやったりしますよ。
?梨 いつも同じ動きじゃなくて、逆の動きとか守備範囲が広いポジションに入るとかするといいんですよね。たとえば、サードの選手がセカンドのシートノックに入るとうまくなるんですよ。
柳川 あのサードうまいな、っていう高校生は下級生の時にセカンドの経験があったり。そういう子はショートの打球までも処理してくれて映えます。
――井端(弘和)コーチが新任になって、「岡本は動きながら捕って投げるほうがハマるタイプだからショートを練習したほうがリズムが掴めるだろう」と。
?梨 井端はプロの中でもちゃんと選手を見てますよ。
柳川 すげぇいいコーチになりそうですよね。
?梨 もしかしたら、井端が坂本(勇人)を再生させるかもしれないですよ。
――坂本……なんとかしてほしいですね。
FGE ほんとにね、オーラがなくなった。
―― 一時期は今の山田哲人(ヤクルト)クラスのスゴさ……成績だけじゃなく、存在感や信頼感が飛び抜けた選手になると思ってましたからね。
FGE だって、ハンカチ世代のドラフトではマエケン(前田健太/広島)とマー君(田中将大/ヤンキース)と並んで「俺世代、こい」ってゆうてた坂本がね。
?梨 でも、もう1000本は打ってるんですよね。
柳川 出てくるのが2年目で早かったから。
FGE だいたい打順も1番だったんでヒット数は多いすよ。なんか1000本の記録も持っているはずです。
(編集部註・25歳5カ月での1000安打はNPB史上3番目の早さ、セ・リーグでは最年少記録。今年終了時で通算1234安打)
☆これでいいのか? 巨人のドラフト指名の傾向
蔵 「戸根(千明/巨人)は戸根」というイメージ通りでした。
柳川 でも、2位だからなぁ。3位とか4位だったら、スカウトはいい仕事をしたと思います。たしかに戸根も40試合以上投げて、新人でよくやったと思います。でも、ドラ2で即戦力を獲って、ワンポイント含めて中継ぎで40試合。ホールド数は1ケタで自慢できる指名か、といわれるとそうではないと。2位の格ならせめて10勝か、中継ぎなら50、60試合投げてないと、自慢できる指名だと思えないですね。あと、『野球太郎No.013』の座談会でも言いましたが、佐野(泰雄/西武)とか戸根は「ドラフト2位」というタイプじゃないんですよ。ドラフト2位らしい成績になっていくか、やっぱり3位とか4位で獲っての選手だったか、今後わかると思います。
yuki 巨人は急激に成長した選手の評価を上げていく傾向が出てきました。それが、2015年のドラフトにも繋がっていますよね。2013年のドラフトでも結果的に石川歩はロッテにいきましたが、石川の指名もそうでしたし。スケールよりも、いま勢いよく伸びている選手を優先している指名は、長い年数を見た時に大丈夫なのかな、という不安があります。
?梨 スターがいなくなっちゃいましたもんね。
yuki ほんとにスターがいない。だから今年は小笠原(慎之介/中日1位)にいってもよかったのかなぁ、という気もしますよ。
柳川 今年の指名で言うと、当日に監督がいなくて、完全にスカウト主導のドラフトだったからかな、と思ってしまいます。今回、指名された野手だと申し訳ないけど、今年苦しんだ打線の起爆剤にはならないんじゃないかな。
FGE インパクトはないですよね。
柳川 あと、3軍を始めるみたいなんですけど、「3軍作るための指名だな。ソフトバンクとは違うな」というのは思いますよね。まぁ、3軍を機能させるためには、しょうがないのかもしれないけど。
FGE 育成で獲った選手を見ても、他の球団と比べて特徴が弱いかな、っていう選手たちですよね。三ツ間(卓也/中日育成3位)とか赤松(幸輔/オリックス育成2位)とか大木(貴将/ロッテ育成1位)とかは名前を見ると、何を買われて獲られたかの理由がわかる。
――赤松のパワーとか、大木のスピードは聞きますね。
FGE 増田(大輝/巨人育成1位)もいい選手ではありますけど……。やっぱり3軍は1軍まで遠いわけだから、「ここだけは1軍の選手にも負けてない!」っていうのがないと、モチベーションが続きづらい。前と比べると、コーチもちゃんとつけてるし、試合数も増やすってことで、よくなることは期待したいんですけど、もうちょっと特徴ある選手を獲ってほしかったかな、とは思いますね。
▲巨人ドラフト1位の桜井俊貴の評価などは、現在発売中の『野球太郎No.017』でご確認ください!
〈座談会出席者プロフィール〉
蔵建て男(座談会では『蔵』)
人気ドラフトサイト「迷スカウト」の管理人。ネットスカウトの草分け的な存在で、プロスカウトとの交流も。Twitterアカウントは@kuratateo。
柳川貴裕
まだ陽の目を見ない有望選手の確変ポイントを逃さない“ネット裏のハネ師”としても活躍中。現在の推しメンは太田夢莉(NMB48)。
yuki
1996年から長年に渡って続く老舗サイト「ドラフト会議ホームページ」の管理人を務める。Twitterアカウントは@draft_kaigi。
?梨雅男
幅広い人脈を駆使して、高校野球の映像収集をする、マニアックなビデオ観戦者。現役草野球プレーヤーでもあり、昨季は30試合に出場した。
ファームゲームイーター(座談会では『FGE』)
2軍マニア&遠征好きが高じて、アマ野球観戦にも進出。地方大学や独立リーグを愛し、偏執的な観戦スタイルを貫く。
構成=野球太郎編集部
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