パ・リーグもまだまだ熱いぞ! 西武とロッテ、CSに滑り込むのはどっち?
【この記事の読みどころ】
・失点が多くとも、それを上回る得点力で勝ってきた西武
・優位性を持つ投手力を生かしたいロッテ
・西武が有利も大きな不安要素あり……3位に入るのはどっちだ!?
前半戦終了時点では6ゲーム差が開いていた3位・西武と4位・ロッテ。しかし後半戦が始まると、互いの連敗と連勝が重なって一気に差が縮まり、クライマックスシリーズ(以下CS)出場権を懸けた競り合いになっている。首位のソフトバンクが歴史的な独走状態にあるパ・リーグに見どころが生まれた形だ。
☆単純な戦力は西武のほうが上だが……
得点と失点に関わる数字から、今シーズンの両チームを見たのが最初の図だ。
西武は一時期よりは数字を落としたものの、リーグ平均を上回る得点力が強みだ。
得点を生み出す上で重要な出塁率は平均を超え、ISO(長打率から打率を引いた純粋な長打力を計る指標)はソフトバンクに迫るリーグ2番目の数字を記録している。
いうまでもないが、それを支えているのがリーグトップの109本塁打であり、中村剛也(33本)、メヒア(19本)、森友哉(13本)らの打力となる。アベレージだけはなく28本の二塁打を打っている秋山翔吾の活躍なども、ISOアップにつながっている。
失点は多く、リーグ平均をオーバーしている。投手は四球が多めで三振があまり奪えていない。ただ、打球を高確率でアウトにしており、守備の安定感は認められるため、失点増の原因の一端は “単純な投手力”にあるだろう。
勝敗では西武に肉薄しているロッテだが、平均得点も失点率もともに西武に及ばない。ただ投手については、三振や四球の頻度(対戦打席に占める割合)でどちらも西武よりいい数字が出ている。
それでも失点がかさんでいるのは、本塁打以外の打球をアウトにした割合の低さなどから疑われる守備の影響や、投手が安打になりやすい打球を多く打たれていることなどが1つの理由として考えられる。
素直に得失点から右側の数字だけを見た場合、競り合いをしているチームには見えにくい内容ではある。両チームの得失点から、過去の統計に基づく推定勝利数を計算すると、西武は60勝程度となる。西武が得点力をうまく勝利に結びつけられなかった結果、この競り合いが生じているというのが自然な見方だろう。
とはいっても、ベースとなる戦力で上回っているのは西武だ。順当な結果が出るのであれば、西武がこの競り合いを制すると考えるべきだろう。
☆打てれば西武、守りきればロッテがCSへ
ただ、チーム力はいつも等しく出力されるものではない。コンディションなどで上振れ下振れするのが普通だ。
図は球宴明け以降の両チームの直近10試合を平均した得点と失点の推移だ。先ほどのシーズン全体の数字とは結構違った域での数字の動きも見られる。
平均4.24点を記録している西武打線は、連敗中は4点どころか3点を割る事態に陥っていた。失点も5点を超えていた。
ロッテは得点についてはほぼ平均を保ち、シーズンを通した数字とほぼ同じだったものの、失点が下方に振れていた。シーズン全体では4.28点を奪われているディフェンスが、短期間ながら3点を割っていたのだから、かなりよい状態が来ていたことが推測される。
その後の推移に注目すると、西武は得点力が回復傾向に入り、失点も併せて上昇している。終盤は試合が詰まっており投手陣にとっては大変な時期だが、それでも勝てているので、ディフェンス面を得点力でカバーする西武らしい戦い方ができている。これが続くようなら、順当にCS出場を決められる。
ロッテは失点率が右肩上がりになっている。球宴明け直後に訪れた失点を抑えられた期間からは抜けてしまった。得点力も下がり気味で勝利を一気に積み重ねるのは難しい局面が来ているように見える。CS出場を果たすとすれば、最後の最後まで僅差で食らいつき、ゴール前でかわすような形が現実的に映る。
とはいえ、身も蓋もない話になってしまうが、残り試合は約30試合と少なく、エースが先発した試合での敗戦や大量得点しながらの敗戦といった、言うならば事故的な結果がどのように多く訪れるか、この短期間で好調期を迎えるのか、不調期におちいってしまうのかなどで、CS出場権はどちらにもたらされてもおかしくない。
西武はここまで救援投手陣がかなり稼働しており、パフォーマンスへの影響によっては「事故」を重ねる可能性もある。最後まで読めないCS出場権争いになりそうだ。
■ライタープロフィール
秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)/1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。
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