山田哲人(ヤクルト)、柳田悠岐(ソフトバンク)による、両リーグでのトリプルスリー達成や、秋山翔吾(西武)が放ったシーズン新記録の216安打など、輝かしい記録が打ち立てられた2015年のプロ野球。
そんな輝かしい記録に隠れ、今年ひっそりと珍記録に挑んでいた、選手、チームがあったのはあまり知られていない。ここでは、そんな珍記録達を紹介してみたい。
●3年連続開幕サヨナラ負け
この不名誉な記録に立ち向かったのは、オリックス・バファローズ。2013年、2014年と、開幕戦を2年連続でサヨナラ負けしているのだ。
これは2リーグ制以降、史上初の出来事であり、ファンとしては悔しい思いを2年続けて目撃。今季もまた、奇しくもビジターでの開幕を迎えたオリックス。記録更新のチャンス? が巡ってきた。
しかし、結果は1-0の完封負け。同じ負けなら、記録更新したほうが…なんて思うのはオリックス以外のファンだけだろう。とにかく記録は途絶えてしまった。
チームはその後、4連敗でスタートダッシュに失敗。優勝候補と評されながら、そのまま浮上のきっかけを掴めぬまま5位でシーズン終了となってしまった。今季のオリックスの不振は、この奇妙な負け方が、尾を引いたためだろうか?
●実勤29年
今シーズン、日本ハムファイターズから引退した中嶋聡が打ち立てた記録が、実勤29年のプロ野球タイ記録である。
1987年に阪急ブレーブスに入団してから、29年連続で一軍での試合出場を果たしている中嶋。引退により来季の新記録達成はならないが、工藤公康、山本昌に並びプロ野球記録を達成した。
中嶋の引退で途切れたのは、記録だけではない。それは、阪急ブレーブスでプレーした選手の終わりも意味していた。中嶋の引退で、ブレーブス出身者は全員引退したことになる。
最後の阪急戦士が残した実勤29年の記録から、プロ野球の歴史の重みを感じることができるだろう。
●7年連続サヨナラ打
華々しいサヨナラ打の記録に挑んだのは、通算打率.242の広島東洋カープのベテラン捕手・石原慶幸だ。
昨シーズンまで6年連続のサヨナラ打は元・西武ライオンズ等のアレックス・カブレラと並ぶ日本タイ記録だった。
一見地味で堅守のベテラン捕手に見える石原だが、数々のネタを持つ有能捕手ということはファンの中では有名な話。その石原が日本記録を打ち立てることに期待したファンは少なくないはず。
結果としては、今季の石原はサヨナラ打を記録できず、新記録とはならなかった。昨季台頭した會澤翼が前半戦の正捕手だったこともあり、出場機会が激減したのが1番の原因だろう。
後半戦は正捕手を奪還した石原。チャンスはあったが、記録は今季で途絶えてしまった。カープお得意のサヨナラ打Tシャツに、石原がラインナップされなかったのも初の事である。
このように、あまり知られていない記録を楽しむのも野球の楽しみの一つといえる。他にも、岡田幸文(ロッテ)のデビュー以来2087打席の連続無本塁打など、スポットライトが当たらない記録はまだまだある。
来季もまた、大記録に隠れた珍記録が生まれることを期待してやまない。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)