秋季大会やドラフト会議が終わり、高校野球の喧騒もひと段落。来春に向けて球児たちは練習を中心とした日々を過ごす。
秋の高校野球の動向を追ってきた週刊野球太郎の連載「高校野球最前線・秋の陣」は今回が最終回。日本一早いセンバツ優勝予想などをお送りする。
明治神宮大会を終え、秋季地区大会で好成績を挙げたチームの次なる大目標はセンバツ。ひと冬を越えて化けるチームもあるだろうが、現時点でのセンバツ優勝予想をしてみたい。
筆頭に挙げるのは、やはり星稜(石川)。明治神宮大会決勝では札幌大谷(北海道)の前に1対2で敗れたが、これはエース・奥川恭伸を温存し、1年生の荻原吟哉が投げての結果ということで力負けではない。しかも荻原は他校なら間違いなくエースクラスという好投を見せただけに、投手力には抜きん出たものを感じた。
打線に関しても決勝ではスクイズのみの1得点と沈黙させられたが、初戦に広陵(広島)から9得点、準決勝も高松商(香川)から7点奪っていることを思えばさほど不安はない。
なによりこの準優勝で優勝への思いがさらに高まり、一丸となってセンバツの覇権を奪いにくるはず。悲願の甲子園初優勝をつかめるか。
対抗馬は札幌大谷。明治神宮大会は1回戦から登場し、星稜より1試合多かったが、エースの西原健太を中心に4人の投手を効果的に起用し、初出場で見事に頂点まで駆け上がった。
しかも決勝は西原、準決勝は太田流星が完投(太田はあわやノーヒットノーラン)するなど、全国レベルのチームを相手に複数の投手が見せ場を作ったところも見逃せない。
星稜と札幌大谷が再びセンバツの決勝で相まみえることになっても面白い。今から3月23日の開幕が待ち遠しい。
元プロ野球選手の2世が毎年のように話題になる近年の高校野球。来年にかけての注目選手筆頭は、ハマの番長こと三浦大輔(DeNAコーチ)の息子・三浦澪央斗(平塚学園)だ。
周囲に促されることなく自然と野球を始めたいと思い、小学3年生で野球を始めたときから投手一筋。父の投球動画を参考に腕を磨いたところ、フォームが父にそっくりになったという。
今はチームのエースを目指すためにフォークを練習中とのこと。高田商で高校野球を送った父は3年夏の奈良大会決勝で、強豪・天理の厚い壁に甲子園を阻まれたが、息子の未来はいかに。
現役時代は主に広島で活躍し、引退後は楽天で田中将大(ヤンキース)を育てた名コーチ・紀藤真琴。現在はプロのユニフォームを脱ぎ、小学生から社会人まで幅広く指導する野球塾「紀藤塾」を営んでいた。
そんな折、11月24日に水戸啓明(茨城)の監督に就任することが発表されたのだが、その就任挨拶がなかなかウィットに富んでいた。水戸啓明の創立60周年記念講演会の講師を務め、ひとしきり演説したあとに「報告があります」と監督就任を切り出したのだ。
水戸啓明は前身の水戸短大付時代の1996年夏、2002年春、甲子園に出場したことがあり、OBに會澤翼(広島)もいるが近年は奮っていない。紀藤監督の就任が起爆剤になるか、プロ経験が豊富な新監督のお手並みに注目したい。
ミレニアム世代を中心に様々な出来事があった2018年の高校野球だったが、真っ先に思い出されるのは社会現象にもなった「金農旋風」。
エース・吉田輝星が侍ポーズとともに強豪校の打者をバッタバッタと切り崩していき、大阪桐蔭(大阪)にこそ敗れたものの、準優勝と日本中に話題を振りまいた。
ドラフト会議では、外れとはいえ日本ハムが吉田を1位指名。高卒で契約金1億円は、まさにシンデレラボーイと呼ぶにふさわしい。
ただ、この夏の活躍で凄まじい出世街道を駆け上ったが、ここからが本当の勝負。次はプロの強打者たち、そしてWBCやオリンピックで世界を相手になで斬りにする侍・吉田の姿を見たい。
高校野球は実際に試合を見るのももちろんだが、優勝予想をしているときもとても楽しい。筆者は性格的に無難な予想に終始しがちだが、それでも根拠を考え、ああでもないこうでもないと頭を繰り回している瞬間に幸せを感じる。
大抵、予想は外れるものの、それでも考えるのと考えないのでは大会に対する思い入れが変わってくるので、発表する場の有無に関わらず常に予想したいと思っている。
そういった優勝予想の楽しみにおいて、今年、多くのファンを惑わせたのは金足農(秋田)だろう。あの快進撃は野球の神様でも予想できたかどうか。それだけのミラクルチームだったと思う。
来春のセンバツでも金足農のようなチームの出現に期待したくなるが、稀にしか見られないからこそ価値があると考えると痛し痒し……。ただ、ミラクル出現の瞬間は見逃したくないので、これからも常にアンテナを張っておこう。
文=森田真悟(もりた・しんご)