前回WBCで歴史的な大躍進を見せたプエルトリコだが、その準優勝チームと今回のチームは全くの別物と考えていいだろう。カリブ海に浮かぶ、米国自治領という事情から、有望選手は早々に本土に渡り、メジャーリーグで成功すると帰っては来ない。現地のウィンターリーグは衰退する一方で、チーム数も4チームにまで減っている(写真はプエルトリコ・カグアスの試合風景)。
ならば今大会に力を注げばとも思うのだが、人材が枯渇しているのか、社会人のトップチームでも渡り合えるような布陣だ。「メジャーリーガー」のウィル・ニエベス(元ナショナルズほか)も名を連ねるが、今シーズン途中にFAとなった彼にとって、今大会は「就活」の場でしかない。他のメンバーを見ても、マイナーの下位レベルの選手が多数派で、中にはプロ経験もない選手が選ばれている。
前回のWBC、サンフランシスコでのリベンジを果たすべく、NPBは大会前に強化試合を組んでいるものの、スパーリングの相手にもならないようなメンバー構成だ。
本大会では、日本とは別のAグループに入っているが、イタリア、カナダと東京行きの最後の一枚の切符を争うことになるだろう。逆に、いくら調整段階とはいっても、福岡の強化試合でプエルトリコに苦戦するようだと、侍ジャパンの前途は多難だろう。
魅力に乏しいチームだが、あえて名前を挙げるならば、今年、カージナルス3Aでプレーしたフアン・シルバに注目したい。国際大会はアジア各国のリーグへのアピールの場でもある。こういう選手の必死のプレーが勝負の行方を左右するかもしれない。
文=阿佐智(あさ・さとし)
1970年生まれ。世界放浪と野球観戦を生業とするライター。「週刊ベースボール」、「読む野球」、「スポーツナビ」などに寄稿。一発当てようと、現在出版のあてのない新刊を執筆中。ブログ「阿佐智のアサスポ・ワールドベースボール」(http://www.plus-blog.sportsnavi.com/gr009041)