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シーズンオフの風物詩!? ミスタープロ野球が広めた「自主トレーニング」にまつわるアレコレ


 契約更改もほぼ終わると、シーズンオフのニュースはめぼしいものがなかなか出なくなってくる。だが、新年を迎えると、続々と情報が入ってくるのが自主トレーニングの話題だ。

 ある選手は球団の施設で、ある選手は海外で行うなど、様々なアプローチで2月1日のキャンプインに向けて体を仕上げていく。また、近年はウェアの品質向上、トレーニング理論の発達などで自主トレ事情も一昔とは大違いになっている。

 今回は、そんな自主トレーニングにまつわるエピソードを紹介しよう。

自主トレが広まったのは「ミスタープロ野球」から?


 自主トレが注目されるようになったのは、やはり「ミスタープロ野球」こと長嶋茂雄の影響だ。

 巨人での現役、監督時代を通して日本一の標高を誇る富士山を愛した長嶋は、1967年から1973年まで、富士山がよく望める伊豆・大仁にて自主トレを行った。定宿にしていた大仁ホテルでは、離れの「富士の間」に宿泊するあたりに、富士山への強いこだわりを感じさせる。

 ある年にはまだ小さかった長男・一茂が一緒にトレーニングをしたいと訴え、ヘロヘロになりながらも城山までのランニングを完走したこともあった。長嶋が毎年汗を流したそのランニングコースは昨年5月、伊豆の国市から「読売巨人軍長嶋茂雄ランニングロード」と命名され、その功績が称えられた。

 その後、大仁では西武時代の清原和博、松坂大輔(ソフトバンク)が自主トレを行っている。


近年は大人数の自主トレが主流


 自主トレ報道でよく目にするのは、各球団の選手が大人数でトレーニングに取り組む様子。例えば巨人の場合、内海哲也、山口鉄也を中心とした投手陣や、阿部慎之助を中心に長野久義、坂本勇人らが加わった野手陣が、いずれもグアムで自主トレを行ってきた。

 特に野手陣は、リーダーである阿部が若手選手たちの滞在費、当地での施設使用費などを全て負担するというものだ。その様子は以前、スポーツニュースでも取り上げられたことがある。

 しかし、阿部は2016年から長野、坂本にその座を譲り、個人で自主トレを実施。2017年には小林誠司と自主トレを行い、巨人の正捕手に必要なノウハウを伝授するという。

 一方、他球団でも特定の地での自主トレを、代々選手が引き継いでいる伝統がある。ヤクルトでは1990年代の池山隆寛が愛媛・松山で自主トレを行って以降、宮本慎也が引き継ぎ、現在では川端慎吾、山田哲人へと続いている。

 ソフトバンクでは、ダイエー時代に秋山幸二が自主トレをグアムで実施。その流れは松中信彦、松田宣浩と今も続いている。

球団、競技の垣根を超えた自主トレ


 近年は、交流戦やWBCなどの影響で球団の垣根を越えた選手同士の交流が、一昔よりも活発になっている。その特徴は自主トレにも表れている。

 よく見られるのは母校の先輩・後輩が一緒に行うパターンで、西岡剛(阪神)は母校・大阪桐蔭の後輩である平田良介(中日)、中田翔(日本ハム)ら「チーム大阪桐蔭」で自主トレを行ってきた。

 また、ポジションを同じくする選手に、他球団の若手が「弟子入り」するパターンもある。2012年には坂本勇人が球界屈指の名手・宮本慎也(ヤクルト)の自主トレに参加。課題としていた守備力向上に励んだ。

 最近では2016年に鈴木誠也(広島)が内川聖一(ソフトバンク)と自主トレを共にし、その打撃術を学んだ。その結果、一気にブレイクを果たし、広島のリーグ優勝に大きく貢献した。

 ほかにも野球選手同士だけでなく、他競技の選手と自主トレを実施することもあった。かつては阪神時代の城島健司の自主トレに、ビーチバレー選手の浦田聖子と西堀健実が参加したり、内川が陸上選手の福島千里と合同自主トレを行うなど、他競技のノウハウを野球に生かす方法も有効だ。

 そろそろ各地で自主トレの話題が取り上げられる季節。2017年も興味は尽きない。


文=武山智史(たけやま・さとし)

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