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《野球太郎ストーリーズ》広島2014年ドラフト1位、野間峻祥。即プロ通用の足と肩。スター性も◎の外野手(1)

取材・文=尾関雄一朗

《野球太郎ストーリーズ》広島2014年ドラフト1位、野間峻祥。即プロ通用の足と肩。スター性も◎の外野手(1)
「即戦力投手を外した場合は彼を指名してほしい」。有原航平(早稲田大)を外した広島は、緒方孝市新監督が一目惚れした大学球界屈指の外野手を1位指名。その韋駄天ぶりと強肩はスカウト陣も絶賛!

縁深くも驚きの外れ1位


 会場全体が一瞬、キョトンとなって、その後に沸き起こる大歓声。ドラフト会議当日、中部学院大のホールで野球部の監督や部員、報道陣らとテレビ中継を見ていた野間は、自身の名前が早々に読み上げられ驚きを口にした。

「まさか外れ1位で指名されるとは思っていなかったので、非常に嬉しいです」

 ドラフトの数週間前、ある夕刊紙で巨人の外れ1位候補と報じられた。その際、本人は「ないないない、って感じです」とおどけていた。大学の先輩にあたる小豆畑眞也(西濃運輸→阪神)はドラフト時、2位指名もあると予想されながら結局4位まで残った経緯がある。その経験者から以前、「(上位候補と報道されても、下位まで)残るから、油断するな」と聞いていたというから、「まさか」はあながちウソではなさそうだ。

 野間にとって広島は縁のある球団だ。今季30試合に登板し4勝を挙げた21歳の左腕・戸田隆矢とは中学時代、クラブチームで先輩後輩関係だった。野間が1年先輩だが「戸田からは、ナメられている感じ」とのことで、どうやら野間がいじられているらしい。一方で「前に戸田がサインを書いているところを見たんです。自分、字がきれいな方ではないんですけど、戸田が書けるなら自分も大丈夫かなって、ちょっと自信がつきました」と、妙なところでプロへの不安を払拭している。

 同じ岐阜県学生リーグ出身の菊池涼介が赤ヘル軍団の急先鋒として活躍しているのも心強い。菊池が中京学院大4年生の時、野間は中部学院大1年生ながら試合にも出ていた。当時深く話したことはないが、菊池もいくらか野間を認識していた様子。また後年、野間が東海地区大学野球リーグの選抜メンバーで横浜に遠征した際、広島ナインと同じホテルになり、目の前を菊池が通りがかったこともある。今度は両者が学生時代とは別の形でスコアボードに名を連ね、同じスケジュールのもと全国を遠征することになる。

即プロ通用の快足・強肩


 昨今のプロ野球では球場が広くなったせいもあり、外野手は従来以上に足の速さと肩の強さが求められる。打撃はプロ入り後の鍛練でなんとかなる面もあるが、足と肩は天賦によるところが大きい。プレーヤーに足と肩が備わっていれば、代走や守備固めも含め、出場機会が得やすくなる。

 その点で野間は相当な武器をもっている。50メートル走5秒8の快足と遠投110メートルの強肩。弊誌『野球太郎』の前号で、プロ球団スカウトにアンケートをする企画があるが、野間を称賛する意見が相次いだ。

「走塁では一歩目の思い切りがよく、三遊間を破るヒットで二塁からホームまで還ってこられます」(広島・松本有史スカウト)

「足と肩はプロでもトップレベルです」(某球団・匿名スカウト)

 一方で、本人は自身の足と肩をどう分析しているのか。ドラフト前の取材の際、各プレーについて自信度を記入してもらったところ、答えはこうだ(Cを「普通」としたA〜Eの5段階評価)。
【走塁A(スピードA、盗塁C、状況判断B)、守備C(フィールディングC、送球C、肩B)】

 本人曰く「足は速いほうだと思いますけど…。大学にきて少し速くなった。盗塁はできるんですけど、そんなに自分的には…。ここぞって時には仕掛けたりします。盗めると思ったら行きますね。刺されない? そうですね、走ったら(成功する)…」。なおグラウンドでの積極走塁とは反対に、話のトーンが控えめで語尾に「…」が多くなるのが野間らしい。

 肩については「上西さん(主起=日本生命)を見て最初びっくりしましたね。高校の時から肩の自信はあったので、大学でもいけるだろうと思ったんですけど、こっちにきてびっくりしました」

 1年先輩の上西の強肩に面喰ったというが、右中間でコンビを組むと野間だって見劣りしなかった。3年時には春秋の全国大会に出場したが、神宮でのシートノックなどで見せる強肩の競演はアマ野球ファンの印象に残った。原克隆監督は「ともに肩は強いですが、スマートフォンを使う現代人と、槍を投げる原始人ぐらい、その性質は違います。野間は前者ですが、上西は後者で昭和チック」とユニークなたとえで解説する。

 外野手はドラフトでの補強優先度が低い球団が多く、指名順位が下がる傾向にあるが、一方で中堅手としてレギュラーをとれる資質は貴重でもある。広島は迷いなく最高評価を下した。

次回、「ミート力あり1年生から活躍」

(※本稿は2017年11月発売『野球太郎No.013 2014ドラフト総決算&2015大展望号』に掲載された「30選手の野球人生ドキュメント 野球太郎ストーリーズ」から、ライター・尾関雄一朗氏が執筆した記事をリライト、転載したものです。)

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