「3.11」に奮い立ってほしい、福島県出身の野球人たち〜今もなお続ける地道な活動
あの震災から4年。3月10日、11日と東日本大震災復興支援試合・侍ジャパンvs欧州選抜が行われるなど、球界としても震災を風化させない取組みを続けている。
選手やOB個人としても、さまざまな義援活動に取り組む例は多い。中でも、いまだ原発事故による風評被害とも戦う福島県ゆかりの野球人たちは、「3.11」という日に対する思いも強いのではないだろうか。
代表例はDeNAの中畑清監督(福島県西白河郡矢吹町出身)。10日の侍ジャパンvs欧州選抜のテレビ中継ではスペシャルゲストとして出演した。開幕前の大事な時期ではあるものの、「(福島県出身の)自分が協力することで、少しでも野球ファンが喜んでくれたら」と、球団に特別に許可をもらっての参加となった。
昨季、通算200盗塁を達成した鈴木尚広(巨人)は福島県相馬市出身。37歳となる新シーズンも、長野五輪スピードスケート金メダリストの清水宏保氏からロケットスタートを学ぶことで、更なる進化を目指している。そんな特訓の合間を縫って、地元相馬署の一日署長を務めるなど、地元ファンを励ます活動にも余念がない。
昨年12月、楽天球団の支援で福島県相馬市にテント型施設「相馬こどもドーム」が新設された。完成披露イベントには岡島豪郎、則本昂大とともに福島県いわき市出身の内田靖人(楽天)が参加。地元の幼稚園児や小学生ら約120人と触れ合った。今季から捕手ではなく内野手登録に変更となった内田にとって、地元で決意を新たにする絶好の舞台になったはずだ。
昨年12月6日に福島市で開催されたNPB東日本大震災復興支援事業「ベースボールフェスタin福島」。このイベントで内田とともに選手宣誓を務めたのが、福島県いわき市出身の園部聡(オリックス)だ。
高校時代から悩まされていた右ヒジを8月に手術し、試合に出場できない長期離脱が確定的、という理由があったとしても、形として高卒1年目のオフに戦力外通告を受けたことは激動のルーキーイヤーだったに違いない。高校日本代表でクリーンナップを務めた男としては、このままで終わる訳にはいかない。様々な経験を糧に、オリックスではT-岡田と並び立つような和製大砲になってほしい。
県出身選手ではないが、福島屈指の強豪校・聖光学院で青春時代を過ごしたのが阪神の歳内宏明だ。歳内の出身は兵庫県で1993年に生まれた。つまり、彼は少年時代に阪神・淡路大震災、高校3年時に東日本大震災と、二度の大震災を経験している。それだけに、被災した子どもたちに何かをしたい、という思いが人一倍強い。いつか甲子園球場に子どもたちを招待できる「歳内シート」を設置したいという目標成就のため、まずは1軍定着を狙うシーズンとなる。
楽天がドーム施設を寄贈したように、原発事故の影響もあって、福島県では屋外での運動や遊びそのものが懸念される場合もある。子どもにとって、自由に外で活動できないことほどフラストレーションが溜まるものはないはずだ。だからこそ、県出身の選手たちは、そのプレーでもって、子どもたちに大いなる希望を与えてほしい。その姿を見た子どもたちの中から、将来のスーパースターが生まれたら、これほど素晴らしいことはない。
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