オフシーズンの風物詩のひとつとなったプロ野球12球団合同トライアウト。
昨年11月に甲子園球場で行われたトライアウトは、投手42人、野手23人の合計65人が参加したが、合格者は3人のみという結果となった。
(※トライアウトを経ていない、自由契約からの移籍選手は除く)
近年ではトライアウトに至るまでの経緯と、選手をとりまく状況をドキュメントするテレビ番組が放送されていることもあって、通常の移籍組よりもちょっと選手に感情移入してしまう。
しかし、トライアウト合格がゴールではなくここからが本番。現在行われているオープン戦での彼らの奮闘ぶりを確認していこう。
(※オープン戦の成績は3月22日現在)
■榎本葵(楽天戦力外→ヤクルト)
【2016年成績】
1軍出場なし
(イースタン・リーグ:60試合/打率.287/1本塁打/16打点)
【今季オープン戦成績】
5試合:打率.571/0本塁打/0打点
トライアウト後、ヤクルトが獲得を発表した榎本葵。楽天では育成契約だったが、ヤクルトでは晴れて支配下登録選手となった。
俊足で広角に長打を打てる「九州のイチロー」。強力なヤクルト打線の中に割って入ることが期待される。
■柴田講平(阪神戦力外→ロッテ)
【2016年成績】
10試合:打率.214/0本塁打/0打点
【今季オープン戦成績】
12試合:打率.059/0本塁打/0打点
トライアウト後、ロッテの秋季キャンプに参加した柴田講平。入団テストでは紅白戦で活躍したこともあり合格を手にした。
俊足、強肩で選球眼が良いという、ロッテ向きの好選手。たとえ下位の打順でも、随所にいやらしい存在感を見せつけるかもしれない。
■久保裕也(DeNA戦力外→楽天)
【2016年成績】
9試合:0勝0敗/防御率5.25
【今季オープン戦成績】
登板なし
トライアウト後、楽天の春季キャンプに参加した久保裕也。入団テストを兼ねたハンファ・イーグルス(韓国)との練習試合で好投して合格をつかみ取った。
クローザー以外の救援陣が万全ではない楽天において、数々の修羅場をくぐり抜けた経験が生かされるだろう。
残念ながらトライアウトに合格できなかった選手は、独立リーグや球団職員、一般の会社員や教員免許取得のための大学進学などさまざまな進路を選んだ。
ある意味で一発勝負ともいえるトライアウトは、合格者にとっても無条件で喜べない複雑な心境であろう。
しかしそれでも、プロ野球選手の道を諦めざるをえなかった彼らのためにも、合格者たちには目覚めざましい活躍を期待したい。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)