毎日のように見ている記者だからわかる!「プロで成功する人は、汗をかくことを厭わず、練習熱心で研究熱心」
成功する人はみんな練習熱心
菊地 僕ら『野球太郎』編集部では月単位の間隔で雑誌を作っています。でも、スポーツ紙の皆さんは毎日、新聞を作って情報を発信するわけで、そこには大変な苦労や経験値があると思います。毎日、定点観測するからこそ見えてくるもの……たとえば選手の成功・失敗を分けるポイントみたいなものはあるんでしょうか?
加藤 基本的には、プロ野球の世界に入れる人たちっていうのは、全員が怪物クラスだと思うんです。目利きであるスカウトに引っかかった時点で、もうスターになれる資格はある。でも、最終的に成功する人とそうでない人を分けるのは、もちろん運やタイミングもあると思うんですけど、まず第一に、練習好きかどうか、という点があると思います。
菊地 練習を継続してできる、というのもまた才能ですよね。
加藤 成功する人はみんな練習熱心です。汗をかくことを厭わず、また研究熱心という特徴もありますよね。基本的に、プロ野球選手はみんな、しっかり練習するんですよ。でも、その中でも1つの練習にかける時間とか、高い意識を持って工夫をして練習しているかどうか、というのが一流になった人の共通点なんじゃないでしょうか。
菊地 今のジャイアンツで練習熱心といえば誰になりますか?
加藤 巨人は一流の選手がみな練習熱心なので、それに引っ張られて若手もおのずと、しっかり練習するという球団のカルチャーがあります。ビッグネームがみな熱心なので、移籍してきた選手が驚くくらいです。坂本(勇人)選手はやっぱりしっかり練習しています。あとは澤村(拓一)選手もトレーニングへの関心が高く、サプリメントの研究や、自分の体がどうなってるのか、について研究熱心です。その選手が誰の影響を受けているのか。師匠格は誰なのか、というのも大きな要因かもしれません。
菊地 なるほど。モデルケースになるわけですね。
加藤 あとは、やっぱりタイミングですよね。たとえば、坂本選手の場合、ルーキーイヤーのプロ初安打が中日との首位攻防戦、センター前へのポテンヒットで、プロ入り初打点も記録しました。でも、もしあれが捕られていたら……、そもそもケガ人などもあって、あの試合に出ていたこと、それ自体、坂本選手が「持っている」というわけで。チャンスが巡ってきて、それに応える力があった。それがプロ野球選手としての「実力」だと思います。
菊地 タイミング、という意味では、長年ブレークが期待されていたジャイアンツの大田泰示選手への期待が今季高まっています。『野球太郎』でも以前、「君はこんなもんじゃない!」という特集で象徴的に取り上げたことがあるんですが、やっときてくれたか、と。
加藤 見たことありますよ〜。大田の背番号55、懐かしい! 東海大相模高の頃から期待され続けた男が……今年、やっと戦力として大田泰示を語れるっていうのは嬉しいですよね。たぶん彼なりに考えて、今までの苦労をうまくプラスにできたんだと思います。
(しかし、その後、3月11日のオープン戦で左大腿二頭筋の肉離れを発症。復帰は5月以降とみられている)
糸井嘉男、大田泰示、柳田悠岐の共通点
菊地 成功or失敗という話題に話を戻すと、自分の頭でしっかり考える選手が全員成功するわけでもないと思うんです。考えすぎて失敗する、みたいな人もいるんじゃないでしょうか。
加藤 非常に多いですね。
菊地 逆に、「え!? この人なんにも考えてないんじゃないか」みたい選手が身体能力でカバーしているケースもありそうです。
加藤 でも、身体能力に関しては、「=ケガをしない」という意味にも通じます。やっぱり体の強さっていうのは大事です。無事是名馬。坂本選手なんかそうですよね。だからケガをしても、痛み止めを飲んだり、場合によっては座薬入れたりしながら試合に出ている選手もいます。12球団、どこもそうです。プロの世界、代わりはいくらでもいる。「痛いです」と言った瞬間に、「じゃあ他の選手がいるからどうぞー」という世界でもあるんですよね。そういう意味では、ケガをしない体の強さっていうのは一流の条件です。
菊地 予防接種もするんでしょうけど、インフルエンザのようにどうしようもない部分もありますからね。
加藤 インフルエンザといえば、オリックスの糸井嘉男選手です! まだ日本ハムの選手だった2009年、日本ハムがパ・リーグで優勝をしたときに報知新聞では「糸井嘉男独占手記」を掲載してシーズンを振り返ってもらったんです。実はその年、日本ハムではインフルエンザの集団感染があって、そのことを思い出した糸井選手は「なんでもっと一生懸命うがいをしなかったんだ……」と(場内笑)。「そのときは自分を責めました」という手記を読んで、やっぱり最高だな!と。
菊地 最高です(笑)。うがいに一生懸命!
加藤 今朝(2月27日)の新聞では糸井主将にオリックスキャンプを総括してもらったんですけども、そこでも素敵なコメントを頂戴しました。「キャンプでもっとも輝いた選手は?」という質問に、「糸井選手です」と(場内笑)。「毎日、遅くまで練習してました」と自分で言っていました(笑)。
菊地 さすが、としかいいようがありません。
加藤 糸井嘉男、大田泰示、あとソフトバンクの柳田悠岐。この3人について話すときって、野球ファンみんな嬉しそうにしますよね。スケールが大きくて、プレーを見るのがすごく楽しい。球場で見てみたいと思わせる。非常に希有な存在だと思います。
■加藤弘士(かとう・ひろし)
1974年4月7日、茨城県水戸市出身。水戸一高ではプロレス研究会に所属。慶應義塾大法学部法律学科を卒業後、1997年に報知新聞社入社。広告局、出版局を経て、2003年からアマ野球担当。アマ野球キャップや、野村克也監督、斎藤佑樹の担当などを経て、2014年より野球デスクとなる。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)
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