ここまでの楽天とソフトバンクとの直接対決15試合を振り返ると、接戦が非常に多くなっている。1点差試合は7試合、2点差以内は9試合を数える。
両チームともこれまで以上に集中力を高めてくることを想像すると、今後も「1点の重み」を争う激戦が展開されそうだ。
そんななか、楽天が用意するのは「取っておきの切り札」だ。楽天のベンチには、某大手スポーツ総合サイトが「雰囲気を変える快足」と命名した田中和基が控えている。
田中は昨秋のドラフト3位で立教大から入団した右投両打のルーキー。左右両打席で一発を打てる俊足強打の外野手として期待されている。
前評判どおり、イースタン・リーグでは163打席で6本塁打(対左投手:3本塁打、対右投手:3本塁打)を放っており、1軍でも5月20日ロッテ戦でプロ初本塁打を記録したが、今期待したいのは「私、失敗しないので」と言えるその快足だ。
代走や守備固めなど限られた出場機会のなか、早くも盗塁はチーム2位の6個を記録し、盗塁刺はゼロ。現在、パリーグで5盗塁以上をマークした18選手のうち、盗塁成功率100パーセントを誇るのは唯一、この鷲の新人だけである。
その6盗塁は全て「終盤8回以降」「3点差以内」「代走」「打者の2球目以内」という条件下で決めた価値の大きいスチールだった。
もっと言えば、そのうち5盗塁は直前に牽制球を受けており、相手バッテリーの警戒網をかい潜る好スチールだった。7月26日ソフトバンク戦では、現在リーグトップの盗塁阻止率を誇る甲斐拓也からも二盗を決めている。
プロ初盗塁は5月19日ロッテ戦だった。1点を追う9回1死、安打を放った島内宏明の代走で出場。続く岡島豪郎の初球時、涌井秀章と吉田裕太のロッテバッテリーから二盗を決めた。その後、暴投で三塁に進んだ田中は一塁ゴロで果敢に本塁突入。バックホームからのクロスプレーを間一髪で制して、同点の生還を決めた。
現在、楽天のチーム盗塁数はリーグ5位の29盗塁。足でかきまわす打線ではない。しかし、1点を争う要所では、田中の爆発力のある脚力がチームを救うはずだ。
(※成績は8月13日現在)
文=柴川友次
NHK大河ドラマ「真田丸」で盛り上がった信州上田に在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドにみえる、楽天推しの野球ブロガー。開幕前から楽天有利、ホークス不利の前半戦日程を指摘、イーグルス躍進の可能性を見抜いた。