各球団のファンが今季、「優勝をあきらめたとき」を振り返る本企画。
やはり神戸在住の筆者として応援したいのは阪神。年々“熱烈”度は薄れていくが、小学4年生で野球を見始めたときはそれこそ熱狂的な阪神ファンだった。
今季はそもそも優勝の期待はしていなかった。なにせ広島が強すぎる。セ・リーグ5球団のファンは薄々わかっていたはずだが、大本命が転ぶことも往々にしてあるのが野球の特性。一縷の望みは持っていた。
今季の阪神は期待されていた中谷将大、陽川尚将が開幕に出遅れた。ただ、開幕スタメンは過不足なかったように思う。
■阪神の開幕スタメン(3月30日、巨人戦)
1(中堅):高山俊
2(二塁):鳥谷敬
3(右翼):糸井嘉男
4(一塁):ロサリオ
5(左翼):福留孝介
6(三塁):大山悠輔
7(遊撃):糸原健斗
8(捕手):梅野隆太郎
9(投手):メッセンジャー
この試合、阪神は5対1で巨人の菅野智之から金星を挙げ、上出来すぎる発進を見せた。高山も5打数2安打。2回の2点目のシーンでは高いセカンドゴロにヘッドスライディングでセーフをもぎ取り、並々ならぬ気迫を見せた。ただ、翌日の2戦目で金本監督は猛然と動いて“しまう”。
■阪神の開幕2戦目スタメン
1(中堅):俊介
2(二塁):上本博紀
3(右翼):糸井嘉男
4(一塁):ロサリオ
5(左翼):福留孝介
6(三塁):大山悠輔
7(遊撃):糸原健斗
8(捕手):梅野隆太郎
9(投手):メッセンジャー
(※3〜8番は開幕戦と同じオーダー)
なんと1、2番を丸々組み替えてしまったのだ。巨人の先発は左腕の田口麗斗。右打者の俊介と上本博紀に組み替えた根拠は明確だったが、どうも小手先の対応の気がしてならなかった。ただ選手にとっては、チャンスはチャンスである。上本は田口に3安打を浴びせた(俊介は無安打)。
しかし翌3戦目、巨人の先発が右腕・野上亮磨ということもあり、スタメンは開幕カードと同じく、1番・高山、2番・鳥谷に戻ってしまう。
この使い分けを「左右病」と揶揄することは簡単だが、悪手ではないだろう。ただ、開幕カードでサクッとオーダーを変えるのは、「1、2番をなんとか固定しよう」という強い思いを感じなかった。
開幕5戦目のDeNA戦で再び、左腕の東克樹と当たるが、今度は1番・高山、2番・上本のスタメンを組む。1番・俊介とは何だったのか…。
そして、1、2番における「2番・二塁」の役目も右腕なら鳥谷、左腕なら上本の使い分けではなかった。4月7日(7戦目)には開幕から3試合しかスタメン出場していない鳥谷に代えて、西岡剛を2番に置いた。
今季、結果的には高山、鳥谷は不調に終わり、上本も負傷離脱。不運もあったが、場当たり的な起用が続いた。ロサリオは我慢して4番起用を続けたが、その間、1、2番は定まらない状況だった。
最初から順風満帆だった広島や西武を除き、ほとんどのチームが遅かれ早かれ打線を改編しているが、とりわけ1、2番を固定したいというのは首脳陣に共通する願いではないだろうか。
ただ、今季の阪神に関しては、2戦目で早々と1、2番を入れ替えた。固定したいという思いは希薄だったのではないだろうか。正直、2戦目のスタメンを見たとき、「あー、やっぱりな」と思ってしまった。少なからず結果論ではあるが、優勝をあきらめるには十分だった。開幕戦の期待が萎んでしまう瞬間だった。
シーズン中盤には1番・糸原健斗、2番・北條史也でうまく回り始めたが、突如として1番を植田海、板山祐太郎と入れ替える試合もあった。
今オフから春季キャンプにかけてはおそらく4番候補の新外国人が話題の中心になるだろう。ただ、好気配を見せた1番・糸原、2番・北條の流れを継続できるか、どっしりと構えて開幕カードを迎えられるか、矢野燿大新監督の手腕に注目したい。
文=落合初春(おちあい・もとはる)