19年ぶりのリーグ最下位に沈んだ中日は、森繁和新監督の下で巻き返しを図る。
ドラフト会議では競合の末、総合力ナンバーワン右腕・柳裕也(明治大)を1位で獲得。ほかにも、守備が光る京田陽太(日本大)を2位、地元のスター球児・藤嶋健人(東邦高)を5位で獲得するなど、指揮官最初の大仕事は満点をあげても良いほどの充実ぶりだった。
だが、個人的に一番のトピックは、3位で高校生内野手・石垣雅海(酒田南高)を指名したことだ。
180センチ85キロの恵まれた体格。高校通算37本塁打を誇るパワーに、50メートル5秒9の俊足。守備面では未知数なところがあるものの、大器を予感させるには十分な能力の持ち主だ。
特筆すべきはバッティング。右打席で無駄の少ない動きから、豪快なフォロースルーでボールを運ぶ。今夏の山形大会では4試合で3本塁打をマーク。3回戦の鶴岡工戦では2本の3ランを叩き込むなど、3安打7打点の大暴れ。2本とも打った瞬間それとわかる高い弾道を描き、ホームランアーティストとしての未来が予見される。
スカウトからは山田哲人(ヤクルト)、坂本勇人(巨人)を彷彿とさせると評価され、なかには「高校時代の山田より素質は上」と断言する人も。加えて本人も「憧れは山田選手、目標はトリプルスリー」と公言しているだけに、プロ入り後の成長を見守りたい。
なぜ石垣の指名が会心かというと、中日にとっては待望の高校生野手だからだ。
中日が高校生野手を獲得したのは2012年の溝脇隼人(九州学院高・5位)までさかのぼる。
それ以降は即戦力を見込んで、社会人出身選手の獲得に終始。ただ、遠藤一星(2014年・7位)、阿部寿樹(2015年・5位)など社会人では実力者と呼ばれた選手も、現状レギュラー奪取までには至っていない。落合博満GM主導といわれるドラフト戦略の限界がささやかれる中、今回の石垣獲得は意義深いのではないか。
石垣の未来予想図(理想図!?)を描くと、1年目はファームで200打席程度立ちシーズン終盤に1軍デビュー。2年目でファームの主軸、3年目には1軍でレギュラーを争える立場へ。4年目でチームの顔に成長を遂げる、といったところだ。
元々守っていた外野への転向やケガなどにより多少のタイムロスはあるかもしれないが、一刻も早く戦力となり長いスパンでチームを支えてもらいたい。
先述の山田や鈴木誠也(広島)といった石垣と似たタイプの選手は、いずれも高卒でプロ入り。4年目で一定の成果を出している。今季、日本一の日本ハムも中田翔や大谷翔平をはじめ、レギュラー野手の多くが高卒の若い選手で占められている。今の球界は高卒野手の早々のブレイク抜きには語れないだろう。
中日も平田良介や福田永将、高橋周平と、時間はかかっているが高卒野手がチームを背負って立とうとしている。ぜひ石垣にもその流れに乗ってもらい、彼がブレイクするころには「黄金期再び」といきたいところだ。
文=加賀一輝(かが・いっき)