2014年の球界でもっとも注目すべき男の1人が、中日ドラゴンズの山本昌であることに異論はないだろう。
1965年8月11日生まれの山本昌は、今年49歳。今季1勝でも白星を挙げれば、浜崎真二(元阪急ほか)が持つ48歳4カ月の最年長勝利記録を更新することになる。また、昨季までの1軍での実働年数が27年。今季1軍で登板があれば実働28年となり、工藤公康(元西武ほか)が持つ日本記録(29年)にあと1年と迫ることになる。
さらに、1984年入団の山本昌は、同一背番号を着用した選手としては、プロ野球史上最長を誇る(2013年終了時点で30年間)。過去には王貞治が、選手・助監督・監督をあわせ、巨人時代に背番号1を30年間(1959-1988)付け続けたが、今年のシーズンが始まればこの記録も抜いて、単独で最長記録を更新。まさに記録尽くめの1年間になることが、今からもう予定されているのだ。
そんな山本昌が長年に渡って結果を出し続けてきた影に、カレーライスの存在があったことはあまり知られていない事実だ。昨年上梓された『継続する心』(青志社)の中に、山本昌とカレーにまつわる重要な記述がある。その一部を引いてみたい。
《試合前は食事がノドを通らない。試合前練習は、ナイターのホームゲームであれば午後2時半ごろから、ビジターならそのあと4時頃から始める。ゲーム終了が9時をすぎるので選手は軽食をとるが、僕は無理。練習時間から先は緊張から胃袋が食事を受け付けない。バナナ1本がせいぜいだろう。だから昼食にしっかり食べる。胃袋はすでに緊張しているので、登板日の昼食はいつもカレーライス。カレーライスならスプーンでかっこむことができるからである。こうして僕はずっと、マウンドにあがってきたのだ》
食事がノドを通らないほどいつも緊張していた、ということも意外だが、あの大きな体を支え、そして先発で投げ続けるスタミナの根源がカレーにあった、ということにもまた驚かされる。
そんな山本昌のカレーパワーにあやかって、昨年ブレイクした選手がいる。2010年のドラフト1位で、昨季ようやく先発に定着し、自身初の二桁勝利を挙げた大野雄大だ。山本昌が登板前にカレーを食べる、ということを知り、大野は登板日の前夜に必ずカレーを食べることにしたという。
大野のカレーは、愛妻・美優奈(みゅうな)夫人のお手製カレー。肉は牛肉で、中辛のカレーを、決まって2杯3杯とおかわりし、エネルギーに代えた結果としての二桁勝利だったのだ。
今季、Bクラスからの巻き返しを図る上で、なくてはならない中日の左腕2人は今年も勝負カレーを食べてマウンドにあがるはずだ。
◎『継続する心』(山本昌/青志社)