ドラフト候補といえば、何を置いてもまずは清宮幸太郎(早稲田実)の話から始めないわけにはいかない。冬のトレーニングがいい方向に向かったか。1年時と比較して体が引き締まり、さらなる進化を感じさせた。
文句無しの最注目選手として出場したセンバツでは、大きな活躍が期待されたが、東海大福岡との2回戦で高めのボールで攻められ、本来の打撃をさせてもらえなかった。ホームラン0本で甲子園を去った。4月7日に春季東京都大会3回戦を突破したが、一発は出ず、本人の口からも「調子はよくない」。今後の大爆発があるのか? 追っていきたい。
清宮と並ぶセンバツの主役として注目された安田尚憲(履正社)。初戦では日大三の櫻井周斗から3三振を喫するも、勝ち進んでいくごとに調子も上向いていき、大会終盤は手がつけられない状態に。
準決勝の報徳学園戦では目の覚めるような打球をライトスタンドへ放つなど、多くの長打でチームを決勝まで導いた。大会を通じて、体に近いサイドを厳しく攻められたが意に介さなかった。さらなる高みに向けて、階段を駆け上がる。
今センバツで名を挙げた1人が永山裕真(報徳学園)。初戦の多治見戦で連発したセンター返しは、基本に忠実な打撃として多くの球児の手本となるものだった。小園海斗との1、2番コンビで塁を埋め、篠原翔太につなぐ報徳学園の攻撃パターンは多くの対戦校を戦慄させた。
今秋のドラフトで指名されるかどうかはこれからの成長次第だが、センバツをキッカケに大きく化ける可能性が高い。潜在能力を開花させてドラフト戦線に躍り出るか。
エース・三浦銀二とのバッテリーで強い印象を残した強肩強打の捕手・古賀悠斗(福大大濠)。2回戦の滋賀学園戦では劣勢の展開のなか、限界に達していた三浦を何度も鼓舞し、粘り強くリード。延長15回引き分けに持ち込み、再試合での勝利につなげた。その再試合ではレフトスタンドへの一発も放ち、攻守で福大大濠の躍進を支えた。
捕手への本格的な転向が昨秋。経験は浅いが、その分、大きな伸びしろを残している。準々決勝ではマウンドにも立った。今後もマルチな活躍を見せてくれるだろう。
今センバツの通算打率はやや物足りない数字だったが、アウトになった打席でも芯にしっかり当てた打球が多く、非凡さを見せつけた木本凌雅(秀岳館)。準々決勝の健大高崎戦では先制弾を放ち、長打力のある右打者として存在感を発揮。常に強いスイングをするわりに、三振が少ないのも大きな長所だ。
より上のステージを狙うのであれば、一塁以外でも守れるところを増やしていきたい。
腰の張りで今センバツの登板を回避したエース・神村月光の名前が霞むほどに、大会を通じて圧巻の投球を見せた棚原孝太(滋賀学園)。落差のあるスライダーでストレート待ちの打者を翻弄していった。
初戦の東海大市原望洋戦では、ドラフト上位候補右腕の金久保優斗に一歩も引けを取らず、14回2失点で完投勝利。続く2回戦はリリーフ登板で福大大濠打線をおよそ8イニング無失点でまとめ、大きなインパクトを残した。
ほかにも秀岳館を3季連続ベスト4に導いた左腕コンビの田浦文丸と川端健斗。バットと足で相手を翻弄し続けた安里樹羅(健大高崎)と魅力的な選手が多くいた。
また、昨年の今井達也(作新学院→西武)のように夏にかけて急成長する選手も出てくるだろう。まだドラフト候補として名前が挙がっていない隠れた原石にも注目していきたい。
来週は先取りドラフト候補の大学生編をお送りする。
文=長嶋英昭(ながしま・ひであき)
東京生まれ、千葉在住。小学校からの友人が、サッカーのU-18日本代表に選出されたことがキッカケで高校時代から学生スポーツにのめり込む。スポーツの現場に足を運びながら、日本各地の観光地を訪れることが最大の生きがい。現在はアマチュアカテゴリーを中心にスポーツ報道の仕事に携わっている。