福岡ソフトバンクホークスの4勝1敗で幕を閉じた今年の日本シリーズ。本拠地で相手の胴上げを見せられた東京ヤクルトスワローズ側は、唇を噛み締めていたことだろう。
しかし神宮球場では、それを受け入れ、なお熱い声援を送るヤクルトファンの姿が何度も見られた。
◎シリーズ史上にその名を残した山田哲人
まずは試合後の表彰式で、敢闘賞として山田哲人の名前が呼ばれたとき。第3戦で3打席連続ホームランという離れ業をやってのけた山田。
苦しい戦いが続いた今シリーズのヤクルトにあって、唯一、輝きを放ったシーンと言ってもいい。その山田に対してのファンの声は、試合中に打席に立ったときと変わらないほどの大音量だった。
そして今シーズン限りで現役引退を発表していた松元ユウイチも、大声援を浴びた。ブラジル出身の日系人であるユウイチは、野球留学選手として来日し、2002年に1軍初出場以来、今季までで548試合に出場。その勝負強さで4番打者として起用されたこともあり、近年は代打の切り札として貴重な働きを見せていた。
そして、2014年途中までヤクルトに在籍していたソフトバンクの川島慶三に対してもエールが送られた。
試合前から、かつてのチームメイトや球団マスコットのつば九郎と談笑する場面が見られた川島。移籍後も絆が続いていることは多くのファンが知るところで、表彰式やパレードも終わり、ソフトバンク優勝の余韻が残る中でのヤクルトファンから大きな「ケイゾウコール」には、川島もライトスタンド付近まで駆け寄って何度も頭を下げ、謝意を示した。
2年連続最下位というドン底から奇跡的復活でリーグ優勝を果たしたヤクルト。その大躍進を温かいファンが後押ししたことは間違いない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)