海風が吹き込み、上空で渦を巻くZOZOマリンスタジアム。その強風はよく知られているが、特に難しいのは三塁側。三遊間後方は渦ができやすい場所で三塁線上の追い方はひとつの見せ場になる。内野ファウルグラウンドもベンチまでの距離があるため、三塁手は特殊な経験と守備力が求められる。
ルーキーの安田尚憲が将来の正三塁手として期待されているが、高校生の守備の評価はおおよそがゴロのさばき方やスローイングが主。ZOZOマリンでしっかりとフライの球際に食らいつく守備ができるか興味深い。
内野全面が土というスタイルを貫く甲子園も守備の難所のひとつ。阪神園芸の職人技できれいに整備されているが、やはり土がイレギュラーの要因になる。
緩い当たりでは打球が止まるため、ダッシュ力も必要。甲子園では三塁手がボテボテの当たりを猛チャージする「画」も多い。プロ野球選手も「土のグラウンドではしっかり腰を落とさないと捕れない」と気を引き締めている。送球時にしっかりと足を地面に差し込む動作も必要で、全体的に脚力が求められるグラウンドだ。長年、ショートのレギュラーを張った鳥谷敬(半身)の強靭な足腰に今一度注目したい。
ちなみに外野には土をフカフカにしてくれるミミズが生息している。西宮市内の小中学生は例年、甲子園で大運動会に臨む機会があるそう。組体操など裸足で外野の芝を踏むこともあり、ミミズが苦手な人にとっては恐怖のイベントだという。
またマツダスタジアム、楽天生命パーク宮城も内野守備部分が土。打球が土部分に入った途端に変化することもあり、どこで捕るのかも見どころだ。
デーゲームでは球場の向きも難所の要因になる。横浜スタジアムはライト側に日光が直撃するため、サングラスは必須アイテム。そのほかにも神宮球場もセンター、ライトがまぶしい。
なかでも特に太陽との戦いを強いられるのは、珍しい西向きのマツダスタジアムだ。内野はスタンドに遮られて日陰になるが、外野はギラギラと西日が射す。外野手にとっては日陰からボールが飛び出してくるやっかいな配置だ。
近年の広島の選手はサングラスのイメージが強いが、恰好をつけているのではなく、第一の目的は西日が目に入るのを避けるためだ。
実はアメリカでは西向きの球場が主流で、観客にとっては内野スタンドが日陰になり、観戦しやすいメリットがある。
プロ野球選手も簡単に守備をこなしているように見えるが、日々、自然環境と戦っているのだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)