交流戦で対戦が期待されたものの、実現にいたらなかった山岡泰輔(現オリックス)と田口麗斗(現巨人)の対決。2人は広島で甲子園を目指し、投げ合う間柄だった。
2013年夏の広島大会決勝。瀬戸内高・山岡、広島新庄高・田口の両投手は延長15回を投げ抜き、ともに無失点。山岡は被安打1と広島新庄高打線を完全に封じ込めた。一方、田口は13安打を打たれながら19三振を奪う力投。両者が力を出し切った上での再試合となった。
迎えた再試合も両投手が最後まで投げ抜く投手戦に。最後は1対0で山岡の瀬戸内高が勝利を収めた。決勝の2試合で山岡は24回を投げ無失点。田口は23回で1失点。ほんのわずかの差が甲子園切符を左右した。
あれから4年が経ち、田口は巨人の左腕エースとして活躍。山岡は即戦力ルーキーとして昨秋のドラフト1位でオリックスへ入団。両者を取り巻く環境は変わったが、先発投手としてチームを背負う役割は変わらない。来シーズン、あの夏の戦いの続きが見られることを期待したい。
2009年のセンバツ決勝では、今村猛(現広島)擁する清峰高と、大会ナンバーワン投手の呼び声が高かった菊池雄星(現西武)の花巻東高が激突した。まれに見る投手戦となったこの試合は1対0で清峰高が勝利し、初優勝を飾っている。
しかし、それから5カ月。夏の甲子園で両校が再戦を果たすことはなかった。
花巻東高は岩手大会を勝ち抜いたものの、清峰高は長崎大会決勝で敗れてしまったのだ。清峰高を下し甲子園にやってきたのは長崎日大高。エースは大瀬良大地(現広島)だった。
長崎大会準々決勝で両校は対戦。「打倒・今村」を掲げる長崎日大高は初回から今村を攻略し、2点を先制する。これがこの夏、今村にとって初めての失点だった。清峰高は大瀬良から4回に1点を奪うも、それ以降は無得点。大瀬良が今村に投げ勝ち、長崎日大高が3対1で勝利を収めた。
最大の敵を破った勢いで長崎日大高は準決勝、決勝も勝利し、甲子園切符を掴んだ。
そして、迎えた甲子園の初戦で、なんと花巻東高対長崎日大高のカードが実現。センバツ決勝を想起させる対戦は、組み合わせが決定直後から大きな話題となった。試合は、花巻東高が8対5で勝ち、菊池が今村に代わって雪辱を果たしたような顛末となった。
今村は高卒で広島に入団。一方で、大瀬良は九州共立大で4年間プレーした後、広島に入団。2人はプロでチームメートとなっている。これも今村と大瀬良の不思議な縁なのだろう。
1998年夏の甲子園。横浜高の松坂大輔(現ソフトバンク)が決勝でノーヒットノーランを成し遂げ、春夏連覇。「平成の怪物」の名をほしいままにした大会だ。この大会では鹿児島実高の杉内俊哉(現巨人)も1回戦の八戸工大一高戦でノーヒットノーランを達成している。
その夏、杉内が苦しんだ試合の1つに鹿児島大会決勝がある。対戦相手は川内高。エースは木佐貫洋(元巨人ほか)だった。春季鹿児島県大会では準決勝で激突し、木佐貫が杉内に投げ勝ち5対2で勝利。その勢いで春の鹿児島を制している。
春の再戦となった決勝では、3回に鹿児島実高が木佐貫から3点を奪い、試合を優位に進める。その後、杉内は川内高の反撃を1点に封じ込め3対1で勝利。甲子園出場を決めた。
そして、2013年5月20日。プロ入り後、初めてとなる2人の投げ合いが実現した(木佐貫は当時日本ハム、杉内は当時巨人)。15年の時を経た再戦では木佐貫が7回1失点の好投でリベンジを果たしている。
2015年夏の大阪大会2回戦(初戦)は、組み合わせが決まったその瞬間から大いに注目を浴びた。大阪桐蔭高と履正社高がいきなり激突。「事実上の決勝戦」と呼べる決戦が行われることになったからだ。
全国で唯一、シード制を取り入れていない大阪だからこそ起こりえるマッチアップ。試合当日、舞洲ベースボールスタジアムには13,000人の観衆が詰めかけ、超満員となった。
履正社高の先発は当時2年だった寺島成輝(現ヤクルト)。2回に履正社高は1点を先制したものの、寺島が3回に2点を失い、大阪桐蔭高に逆転を許す。その後、7回、9回にも大阪桐蔭高は得点を重ね5対1で勝利。3回戦へと駒を進めた。
この試合で、大阪桐蔭高の8番・中堅で出場をしていたのが当時3年の青柳昴樹(現DeNA)だ。センバツでは4番を務めたが、打率.158(19打数3安打)と結果を残せず、夏は打順が下がっていた。寺島を粉砕し信頼を取り戻したいところだったが、2打数無安打(2四球)。試合には勝利したものの、安打は放てなかった。
その後、2015年のドラフトで青柳はDeNAに入団。1年遅れて寺島はヤクルトに入団。新たな舞台で再戦が行われることを期待したい。
山岡、田口のように再戦とならなかったケースもあれば、大瀬良と今村のようにチームメートとなることもある。また、15年の時を経て一戦を交えた杉内、木佐貫のような例もある。プロでの再戦があるかどうかは、野球の神様による気まぐれと言ってもいいのかもしれない。
文=勝田聡(かつた・さとし)