今シーズンで栗山監督が執った「二刀流」大谷翔平の大胆な起用法を見てみよう。
【5月29日・楽天戦】
6番・投手 ※初の指名打者解除
【7月3日・ソフトバンク戦】
・1番・投手
【7月31日〜8月25日】
3番・指名打者専念
【10月16日・クライマックスシリーズ第5戦・ソフトバンク戦】
3番・指名打者→抑え投手
そもそも大谷は、日本ハムのドラフト指名がなければ日本球界に入らず、メジャーリーグでプレーしていたかもしれない。また、日本ハムの監督が栗山英樹氏でなければ、投打「二刀流」は成功しなかったかもしれない。
今シーズンは「二刀流」深化の年。5月29日の「リアル二刀流」解禁に始まり、7月3日の驚愕の先発投手による先頭打者本塁打、締めはCS最終決戦の指名打者解除からの抑えと、ことごとく大谷は大胆器用に応えつづけた。
大谷の起用を「動」とすれば、中田翔とレアードの起用は「静」の極みだ。どんなに不振でも中田の4番はほぼ固定されていたし、打順は変動したがレアードがオーダーから外されたことはない。
とくに去年の6月から7月にかけてのレアードは激しいスランプだった。だが、打率が2割に満たない状況でもスタメンが続き、後半になってようやく本塁打を量産した。もしこれが他球団だったら、レアードは今年の活躍どころか日本球界にいたかも定かではない。
周囲が驚いたコンバートといえば、2014年の近藤健介の捕手から三塁手へのコンバートだろう。結果的にこのコンバート自体は定着しなかったが、翌2015年に近藤がパ・リーグ3位の打率(.326)を残す布石となった。
投手の配置転換では、今シーズンの増井浩俊が印象深い。本来のクローザーの役割が果たせないと見るや、8月からまさかの先発転向。2度の完投勝利を含む10勝を挙て、日本シリーズでは大谷に次ぐ2戦目の先発を任されたほどの活躍を見せた。
栗山監督が尊敬する三原脩氏(元巨人監督ほか・元日本ハム球団社長)は、その独創的な采配から「魔術師」と呼ばれた。今シーズンの数々の奇跡を目の当たりにすると、栗山監督にもそれに近い称号が与えられる日は近いかもしれない。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)