パ・リーグのペナントレースは、楽天とソフトバンクの二強がほかを引き離し、マッチレースの様相を呈してきた。
楽天は則本昂大、美馬学、岸孝之、辛島航ら先発ローテーション、福山博之、松井裕樹らリリーフ陣が安定。打線もウィーラー、ペゲーロの外国人を中心に好調をキープ。とくにペゲーロは、かつてのローズやブライアント(ともに元近鉄ほか)のような、打った瞬間にそれとわかる弾道のアーチを放っている。
一番打者としてチームを引っ張ってきた茂木栄五郎が右ヒジ痛で6月下旬から戦線離脱しているが、それでも勢いが落ちないあたり、今季の楽天の強さは本物だ。
対するソフトバンクも柳田悠岐、内川聖一、デスパイネを中心とした打線は強力。投手陣は主力が相次いで離脱するなか、東浜巨は自身初の2ケタ勝利を達成間近。中継ぎから先発に移った石川柊太が一本立ちするなど、穴を感じさせない働きを見せている。クローザーのサファテも相変わらず盤石だ。
二強の争いは最後までもつれそうだが、昨年15勝の和田毅、14勝の武田翔太がほぼ戦力になっていないかで、前半戦を僅差の2位で折り返したソフトバンクが、総合力で最後は抜け出すのではないか。9月に和田が復帰見込みなのも好材料だ。いずれにしても、二強の争いからは目が離せない。
西武はオールスター前までで貯金9。上位2チームとも、4位以下とも大きく離れた、ある意味、安泰の3位につけている。
ルーキーの源田壮亮が遊撃のレギュラーに定着し、今季からキャプテンに就任した浅村栄斗、そして、パンチ力が増した秋山翔吾も健在。足も使えるこの上位打線3人に、中村剛也、メヒア、栗山巧と続く打線は力強い。
期待されながらも伸び悩み気味の若手投手、高橋光成、多和田真三郎が計算できるところまで成長してほしいところだ。
昨季最下位のオリックスは、近年、不振だった金子千尋、小谷野栄一、中島裕之といった実力者が息を吹き返し、そこに新外国人のロメロがポイントゲッターとして機能。開幕から好調で4月は2位につけていた。ところが、ゴールデンウイーク前にロメロが故障で離脱すると、引きずられるようにチームも調子を落とし、いつのまにかBクラスへ……。
それでも、前半戦は借金4の4位。ロメロも戦線復帰し、オールスター前には腰痛が癒えた吉田正尚も合流。金子とディクソンの2本柱でしっかり星を拾っていければ、まだまだAクラス入りの可能性はある。
日本ハムは、巨人から移籍してきた大田泰示の活躍という話題はあったものの、全体的に投打の歯車が噛み合わず、前半戦で借金20。昨季の日本一チームとは思えぬまさかの低迷ぶりだ。
2009年のリーグ優勝の翌年は4位、2012年優勝の翌年は最下位と、最近は頂点に立つと、次の年に反動が出ている。その流れは断ち切りたいところだが…。チームを立て直すには、やはり大谷翔平と中田翔が奮起するしかなさそう。
開幕からどん底を味わっているロッテだが、オールスター明けの初戦は、9回、一死走者なしから打線がつながり、2点を奪ってサヨナラ勝ち。翌日も、7回裏にベテラン・福浦和也が試合を決める3点タイムリー二塁打を放ち快勝。前半戦の重苦しい雰囲気を吹き飛ばすゲームができた。
前半だけで借金を30もこしらえてはAクラス入りは厳しいが、どこよりも熱いファンの前で、少しでも多く見せ場を作りたい。
投打の個人タイトル争いにも簡単に触れておこう。
打撃部門では何と言っても柳田悠岐だ。現在、打率.323、23本塁打、75打点の三冠王。さらに12球団一の64四球だけあって、出塁率は.451。貢献度は非常に高い。盗塁が12なので、2015年以来のトリプルスリーは難しそうだが、むしろ史上初の「トリプルスリーと三冠王を獲得した打者」という大偉業を達成するかもしれない。
投手部門では、7勝から9勝を挙げている投手が11人と最多勝争いが大混戦。内訳を見ると楽天から4人、ソフトバンクから3人、西武から2人、オリックスから2人と、ほぼシーズン順位に沿った人数となっている。
優勝争いの渦中にいる好調なチームの投手の方が、打線の援護も期待できるだけに有利と思われがちだが、シーズン終盤になると順位の望みがなくなったチームのほうが柔軟な起用ができる可能性もある。そのため誰が有利とは一概には言えない。最後まで競り合いが続きそうだ。
(成績は7月23日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)