「持っている」片鱗は、彼の高校時代にさかのぼる。
光星学院(現・八戸学院光星)の4番としてチームを引っ張った北條にとって、3年夏の甲子園大会は思い出深い大会となった。
北條はこの第94回大会で4本の本塁打を放った。これは夏の甲子園大会における歴代2位の本塁打記録だ。
(1位は5本の清原和博(PL学園)、2位タイは平田良介(大阪桐蔭)が記録している)
また、現チームメートの藤浪晋太郎(大阪桐蔭)とは、この大会の決勝戦で対決。光星学院3対0と完封負けを喫し、惜しくも優勝を逃した。
4番の北條は4打数ノーヒット(うち2三振)。藤浪に完全に抑えられ、この大会でみせていた「ラッキーボーイ」的な勢いは封じられた。
その後、ふたりはドラフト1位(藤浪)、2位(北條)で阪神に入団。プロでも、甲子園大会での勝敗のまま藤浪が常にリードしてきた。
「途中、守備で北條が出てきて怪しいなと思った」
6月2日の楽天戦後、藤浪がヒーローインタビューでみせた北條への“いじり”は、仲の良さを感じさせるものだった。
しかし、藤浪のいじりとは裏腹に、北條の三塁守備は捕球もスローイングも安定度が増していった。
昨年の秋季キャンプ、そして宜野座キャンプでも、久慈照嘉守備コーチに借りたグラブを頭に乗せながら、守備練習を繰り返す北條がいた。
頭が上下前後にぶれないよう、姿勢を保ち、目線を一定にするのが目的だった。
こっけいな姿にもみえたが、そんな地道な努力が成果として現れてきたのだろう。
打撃でも結果が出てきた北條をみていると、千本ノックで守備を鍛えながら、打撃向上にもつなげていった掛布雅之2軍監督の若手時代を思い出す。
6月17日のソフトバンク戦から現在(7/13時点)まで、北條は20試合連続でスタメン起用されている。
マット・ヘイグ、今成亮太、新井良太。開幕前に、三塁のレギュラー争いが予想された3選手は、いまは1軍にいない。
プロは言うまでもなく実力の世界。結果がすべてだ。
北條の大先輩・鳥谷敬は今季、不振に苦しんでいる。ノーヒットで試合を終えると必ずといっていいほど「連続フルイニング出場の是非」が話題に上がる。「スタメンから下げたほうがいいのでは」というわけだ。
しかし、鳥谷の代わりがいるのか。現状での答えはノーである。
鳥谷には厳しい視線が向けられるが、鳥谷に代わる選手が出てくれば、その答えはおのずとみつかるはずだ。
ならば北條が、実力で内野の要・遊撃のポジションを鳥谷から奪う日を期待したい。そうなれば、本当の意味での超変革が成し遂げられたことになる。
これがプロの世界でもっとも納得もできる解決法だ。
文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。