2005年オフに巨人から戦力外通告を受けた清原和博は、仰木彬監督の「お前の花道は俺が作ってやる」という言葉に感銘を受けて、オリックス入団を決めた。
迎えた2006年シーズンは、「仰木監督への恩返し」と言わんばかりに開幕当初からヒットを重ね、好調を維持したまま交流戦へと突入。
1カード目の阪神戦こそ代打出場だったが、2試合で2打席に立ち、四球、安と結果を残す。2カード目の広島戦からは先発復帰。3カード目となる横浜3連戦の初戦では本塁打を打つなど、セ・リーグ相手に快音を響かせた。
そんな上げ潮気配で迎えた5月27日の横浜戦。清原は3打数1安打1四球と、この試合でも結果を出していたが、チームは3対6と3点ビハインドで9回裏、オリックスの攻撃となる。
ここで登場したのが最速161キロを誇る横浜の守護神・クルーン。豪速球で鳴らすクルーンにオリックスナインは食らいつき1死満塁。本塁打が出れば逆転サヨナラという舞台を作る。逆転の一打が求められるなか、打席に入ったのは清原だった。
ここで奇跡が起きる。クルーンが投じた3球目、152キロのストレートを清原が弾き返し、打球は右中間スタンドへ消えた。オリックスの首脳陣、チームメイト、ファンの誰もが願った「逆転サヨナラ満塁本塁打」が生まれたのだ。
試合を決める重要なシーンに巡り合い、きっちりものにできるのが、スターたる証。やはり清原は「真の千両役者」だった。
2000年代のロッテが誇る名捕手といえば、第1回WBCでもベストナインに選ばれた里崎智也。インサイドワークもさることながら打者としても頼もしく、特にチャンスでの勝負強さには目を見張るものがあった。
その勝負強さは交流戦でも十二分に発揮された。2006年6月18日に神宮球場で行われたヤクルト戦。里崎は藤井秀悟から逆転の満塁本塁打を放つ。
年をまたいで、またもや見せ場がやってくる。2007年6月24日、神宮球場でのヤクルト戦でシコースキーから2年連続となる逆転満塁本塁打を放つのだ。
いずれもヤクルト戦で、雨天の神宮球場。似たシチュエーションに嫌な予感がしたヤクルトファンがいたかもしれないが、そういう予感は当たるもの。「里崎ならでは」という見せ場だっただけに、相手が悪かったと割り切るしかない?
続いてはクルクルと時計の針を進めて、2015年の交流戦で生まれた名勝負を。
6月3日のDeNA対ソフトバンク戦(横浜スタジアム)。DeNAの先発「ハマの番長」こと三浦大輔が、強力鷹打線を1点に抑えて試合は6回表に。ここで名勝負第1ラウンドが勃発した。
柳田悠岐(ソフトバンク)がフルスイングで三浦のスライダーをとらえると、打球はグングン伸びて横浜スタジアムのバックスクリーンを直撃。ビジョンを破壊する大アーチをかけた。
さすがの番長も打たれた直後は苦笑いを浮かべていたが、すぐさま気持ちを切り替えて後続をピシャリ。
すると「次は俺の番」とばかりに三浦が反撃。7回に巡ってきた柳田の打席で、アウトローへズバッとストレートを決め、見逃し三振に切って取る。
この三浦対柳田の勝負は、柳田が三振からの本塁打という流れでも盛り上がっただろう。しかし、本塁打からの三振となったことで三浦の「大ベテランの意地」を垣間見ることができた。名勝負の旨味がいっそう増したように感じる。
ちなみに三浦は柳田を抑えた直後にマウンドを降りているのだが、しっかりやり返してからベンチに下がるという演出(?)もまたニクい。
2016年のプロ野球を彩った赤ヘル軍団・広島。
その躍進を象徴するキーワードといえば「神ってる」だが、このフレーズは交流戦をきっかけに生まれたことを覚えているだろうか。
6月17、18日の広島対オリックス。売り出し中の鈴木誠也(広島)が激闘にピリオドを打つサヨナラ本塁打を、2試合連続で放つ。この劇的な殊勲打に対し、緒方孝市監督の口から飛び出したのが件の「神ってる」だった。
広島で2試合連続サヨナラ本塁打を放ったのは、1984年の長島清幸以来となる32年ぶりの快挙。鈴木の神がかった2発はチームを突き動かす原動力となり、秋の美酒へとつながった。
今年もチームを上昇気流に乗せる名フレーズが生まれることを楽しみにしながら、交流戦を見ていきたい。
当たり前となったが故に、ときに交流戦廃止論が挙がることがある。しかし、黎明期から今に至るまで様々な場面で胸を高鳴らせてくれる交流戦は終わってほしくない。
「ほかのリーグのチームと戦うことは、選手にとっても刺激になる」。名勝負、名場面がそう物語っているように思えるからだ。
今年も必ずや後世に乗るワンシーンが飛び出すはず。それを待ちながら、交流戦を楽しもう。
文=森田真悟(もりた・しんご)