津田学園高から奈良産業大という決して有名どころではないチームを経て、2007年秋のドラフト3位で横浜に入団した桑原。ルーキーイヤーこそ初先発初完封を含む3勝を挙げたものの、その後はなかなか結果が出ず、在籍3年間でオリックスへトレード。
オリックスでも4年間で22試合に登板し未勝利と目立った実績はなし。2度目のトレードで移籍した阪神でも、2015年、昨季とファーム暮らしが大半だった。しかも、昨季は初めての1軍登板ゼロ。完全に崖っぷち状態で今季を迎えた。
ところが今季は、オープン戦8試合で7回2/3を投げ1失点。打者29人に対して4安打と好投を続け、開幕1軍入りを果たす。シーズンに入っても、登板するたびに好投。最初の3試合こそ2回1/3で2失点と不安定な場面もあったが、4試合目の登板(4月5日、ヤクルト戦)から、冒頭で紹介した19試合目の登板(5月21日、ヤクルト戦)まで、16試合連続無失点を継続した。
桑原の武器は、150キロ前後の球速ながら打者の手元で小さく変化するストレート。いわゆる「真っスラ」だ。素直な球筋のストレートはほとんどない。それと、横滑りするようなスライダー。かつては四球禍にも苦しんだが、今季は19試合で与四球3個と、コントロールも安定している。
今季の推定年俸は800万円。1軍の最低年俸のおよそ半額強ということからも、球団は桑原をバリバリの1軍戦力とは見ていなかったといえる。年齢的にも、いつ戦力外になってもおかしくない状況だった。
だからこそ、大事な場面で起用され続けている今を、誰よりも意気に感じているはずだ。
このままフル回転が続けば、夏場に向けて心身ともに疲労の蓄積が懸念される。また、他球団の分析も進むだろう。ただ、もうなにも失うものがないという強みもある。桑原の今後のパフォーマンスに注目したい。
(成績は5月22日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)