今年も熱戦が繰り広げられている高校野球の地方大会。甲子園を目指す精鋭たちから、自分たちの3年間の練習を出し切ろうと1勝を目指す球児まで、それぞれが熱い思いを胸に夏を戦っている。
この夏、さっそく大きな目玉になったのは千葉大会の文理開成。野球部員がたった1人で、9人に助っ人を頼んで出場した同校から地域欄の目玉記事が生まれた。試合は5−19の大敗だったが、4番・捕手を務めた助っ人の3年生・黒川英充が2打席連続本塁打を放ったのだ。
今年4月に文理開成に転入した黒川は、部活動に所属していない帰宅部。前校では1年の冬まで野球部に所属していたが、その後は草野球を楽しむ程度の付き合いで、本人も驚きの2打席連発。ネットでは「最強の帰宅部現る!」と騒がれた。
同じく千葉大会からはサッカー部の助っ人も出現。6−2で大網を下した浦安南は野球部員が8人。残る1人をサッカー部所属で運動神経抜群の向後克紀に依頼した。9番・左翼手で出場した向後は、なんと3安打1打点の活躍! 野球部とサッカー部の共同作業により、22年ぶりの夏勝利を手にした。
これを最初に報じたのはスポーツニッポン。「午前中は野球部で練習試合、午後はサッカー部で練習、夜はマクドナルドでバイト」という向後の過密日程を聞き出し、「アルバイトで磨いた『スマイル』が塁上で輝いた」と何ともドラマティックに報じた。畏るべき取材力である……。
2013年の秋季大会で話題となったのは、南北海道・双葉の快進撃だ。3年生が抜け、部員が5人となってしまった野球部はスキー部員3人と帰宅部1人に助っ人を依頼。
大会の1カ月前から練習をはじめた新チームだったが、なんと3戦連続で勝ち進み、小樽支部予選の決勝戦にまで駒を進めたのだ。
それもそのはず、双葉のスキー部は強豪校として知られ、所属部員は運動神経抜群。なかでもスーパー大回転で全国6位の実力を持つ蔦有輝(当時2年)は、本塁打を放つなど大活躍を見せた。
小樽支部予選決勝戦では野球の強豪・北照に0−10で敗れたものの、各メディアがこぞって取材に訪れ、再現VTRを作るなど、注目度の低い秋季大会を大いに盛り上げた。
ちなみに、帰宅部の倉地大世(当時1年)は下宿生活でバットを持っていなかったため、木の棒を振って自主練に励んだという。
(文=落合初春)