日本シリーズも終わり本格的にオフシーズンに入ったプロ野球。余韻に浸る前に時間を少し日本シリーズの前へ巻き戻し、ドラフト会議を振り返りたい。
筆者は日本ハムのファンではないが、先日のドラフトで「会心」と呼ぶにふさわしかった指名は、日本ハムの2位指名・石井一成(早稲田大)と考える。
単純に「即戦力」や「3年後の戦力」といった意味ではなく、日本ハムが今年この順位だからこその会心の指名なのだ。そう感じる理由を紹介しよう。
日本ハムが大学生野手を上位指名するのは珍しい。最近だと2013年のドラフト3位・岡大海(明治大)のみで、野手の指名は高校生ばかりだった。岡以前の大学生野手の上位指名となると、加藤政義(2009年ドラフト3位・九州国際大)、大野奨太(2008年ドラフト2位・東洋大)、木元邦之(2000年ドラフト2位・龍谷大)まで遡る。
それだけに、日本ハムが大卒野手をドラフト2位で指名したことに筆者は驚きを隠せなかった。2位で指名するのは即戦力型の投手と予想していたからだ。しかし、ドラフト中継が終わり頭を整理すると「あぁなるほど」と納得。これが「会心の指名」だと確信するまでにそう時間はかからなかった。
まず、今シーズンの内野事情を見てみよう。一塁が中田翔、二塁が田中賢介、三塁がレアード、遊撃が中島卓也とほぼ固定されていた。全選手がケガなくシーズンを乗り切れたことが日本一につながったのは間違いない。しかし、ケガ人が発生した際のバックアップを考えると心許ないのは確かだった。
バックアップとして抜群の守備を見せていた飯山裕志はシーズン序盤に故障でリタイア。より一層、「内野の備え」への不安が募ったに違いない。
しかし、来シーズンは石井一がいることで三遊間のバックアップはカバーできる。田中に万が一のことがあれば、二塁に中島か石井が回る。
2017年は「内野の備え」として石井一を起用しながら成長を促すことができるのだ。
今シーズンの田中は二塁で142試合に先発出場した。しかし、来シーズンで36歳を迎える。フルシーズンを二塁で戦うのは厳しくなってくる年齢だ。
石井一をバックアップとして起用しつつ、中島を二塁にコンバートし、2年後には中島、石井の二遊間構想を描くことができる。あるいは石井を二塁にコンバートするかもしれない。
二遊間の候補としてファームには太田賢吾、渡辺諒、平沼翔太といった高卒組が控えているのは事実だ。
しかし、大学生野手の石井一をドラフトで獲得したということは、1年目から1軍で起用しつつ、ほかの選手と競わせる方針を取ったということだろう。内外野とポジションは違えども、岡が外野(ドラフト指名は内野だったが)で1年目から起用され高卒組と競い合っているのと同じイメージだ。
2020年の開幕時には田中は引退、もしくは控えとなり、レギュラーを張っていることはないだろう。そして、中島はFAを取得するかどうかという年齢になる。石井一はそのときのための二遊間の主軸候補なのだ。
まさに、これと同じ現象が外野で起きている。陽岱鋼がFA流出と噂されているところへ大卒の岡、そして高卒の谷口、西川、杉谷、淺間と有望株が出番を争い、1軍、2軍でしのぎを削っている。陽が流出しても、戦力ダウンは最小限に食い止める。岡はそのための2013年ドラフト上位指名だったはずだ。
主力のFA流出、衰えによる引退に備えた日本ハムの長期的育成システムの一端が見えた気がする。岡をドラフトで獲得し3年で育て、4年目からレギュラーとして活躍してもらう。その再現を石井で見られることを期待したい。
その「答え合わせ」は2020年シーズンだ。
文=勝田 聡(かつた さとし)