どんなにすごい経歴の持ち主でも、どんなにインパクトのある風貌をしていても、プロ野球選手である以上、チームの勝利に貢献する成績を残していなければ真の人気は得られない。
その点においてジャクソンは、首位を走る広島にとって計り知れない貢献をしている。
チーム最多の56試合に登板し、4勝4敗、防御率1.73(8月24日現在現在)。
8回を守るセットアッパーとして、開幕からここまで完璧といっていいほどの働きを見せている。150キロを超えるストレートをテンポよく投げ込み、緊迫した8回をビシッとしめる姿は、ファンの心をつかんで放さない。
また、ここにきて150キロの快速球だけでなく、彼自身が「速い」ということも注目されている。
チーム1の俊足・赤松真人がサヨナラ打を打ってグランドを疾走したとき、ほかのチームメイトを差し置いて、最初に赤松に追いついたのがジャクソンだったのだ。
その俊足ぶりは赤松をして、
「アレは速いよ」
と言わしめるほど。
その身体能力生かして代走で出場したら、リリーフで登場するよりも大歓声をあびるかもしれない!?
ジャクソンが、ファンから愛される2つ目の理由は、米球界仕込みのファンサービスだ。
ファンからのツイッターなどからは、頻繁にジャクソンのファンサービスのよさが伝わってくる。声援やハイタッチに応じるのは当然、試合前にサインに応じるシーンも多々見受けられるほどだ。
そのなかでも、しばしば見せる被り物のファンサービスは、周囲を笑いの渦に巻き込んでいる。
ひょっとこのお面や熊のマスクで現れ、周囲を驚かせると、マスクをとって満面の笑みを浮かべるジャクソン。そんな天真爛漫なイタズラに、周囲は大爆笑に包まれるのであった。
このように常に周囲を楽しませようとする姿勢がファンに伝わっているのだろう。
ジャクソンがファンから愛される理由、その最大のポイントは登板後に見せる最高の笑顔。それに尽きるだろう。
8回を抑えたとき、天を指さし、大きく手を叩くとニッコリと溢れんばかりの笑みを浮かべる。その顔を見ると、誰もが幸せな気分になることは請け合いだ。
かつて野球選手で、これほどまでに幸せ溢れる笑顔を見せてくれた選手はいただろうか? そう思わせるほど、素敵な笑顔を振りまくのだ。
「日々、過ごしていたら悪いときもあるが、笑顔が消えた悲しい感じで人生をおくりたくない。だから笑顔を絶やさず生きていたい」
笑顔の理由を問われたとき、そう答えたジャクソン。ただ陽気なだけでなく、その笑顔の裏には哲学的な思考もあったのだ。
真実を知ってしまうと、なおさらその笑顔の虜になってしまう。
そんなジャクソンだが、笑顔の内に秘めた闘志だけでなく、広島愛もまた絶大。チームが2位・巨人に追い上げられ、紙面ではメークドラマの再現が騒がれた時期のこと。
「以前、ジャイアンツに引っくり返されて逆転優勝を奪われた話も聞いた。でも、そんなことはもう2度と起こらない。今度は直接対決で連勝して、相手が『ギブアップ』と言うぐらいにどんどん引き離したい。ほかの外国人選手も、皆同じ思いさ」
と、強い闘志を前面に押し出したコメントをジャクソンは残している。
実に頼もしいではないか。陽気さだけではない攻めの姿勢もファンの支持を得ている理由だ。
オフシーズンは、広島でバスケットボールチームに入団したいと語るほど、広島愛は強い。登板後に大きく手を叩くのは、ファンへの感謝の意を示しているのだという。
これほどまでに、広島という土地に、広島ファンに愛着を持ったのは、米球界時代、長い下積み生活のなかで4球団を渡り歩いた男がようやく見つけた安住の地だから、なのかもしれない。
愛する広島で、広島ファンと最高の瞬間を分かち合うため、今日もジャクソン・スマイルを輝かせ躍動する。
文=井上智博(いのうえ・ともひろ)