今季のプロ野球でもっとも驚きを提供した男、といえば大谷翔平(日本ハム)の名を挙げる人は多いだろう。その成長の跡や進化のスゴさを、今季成し遂げた「数字」で振り返ってみたい。
7月19日に行われたオールスターゲーム第2戦は、まさに大谷翔平の進化を感じさせる舞台となった。
この試合で先発した大谷は1回、鳥谷敬(阪神)への2球目で、プロ野球最速タイとなる球速162キロをマーク。2死後、阿部慎之助(巨人)への初球でも162キロを記録。全23球のうち160キロ台を12回計測した。
その後、シーズン後半戦は150キロ台後半での投球が目立った大谷だったが、10月5日、札幌ドームのシーズン最終戦に先発すると、わずか2イニングの登板ながら162キロを連発。尊敬する稲葉篤紀の引退試合に花を添えた。
今季の大谷は、全ての数字で1年目を超えた。投手としては24試合に登板して11勝4敗。防御率2.61。規定投球数を見事クリアし、11勝はチームの勝ち頭でリーグでは5位タイ。防御率はリーグ3位という好成績だった。また、奪三振数「179」も、堂々リーグ3位の好成績だ。
もちろん、「二刀流」選手として、打者としても活躍。こちらは規定打席数には到達できなかったものの87試合に出場し、打率.274。本塁打10本という数字を残した。
この「シーズン10勝&10本塁打」という記録は、日本では初めて、メジャーリーグではベーブ・ルース(当時レッドソックス)が1918年に13勝&11本塁打をマークしただけ、という偉業である。歴史に名を刻んだ男、それが大谷翔平なのである。
7月5日、自身初の「バースデー弾」を放つ活躍を見せた大谷翔平。今季まだ20歳の若武者は、さまざまな「史上最年少記録」を達成している。
誕生日から4日後の7月9日の楽天戦では毎回の16奪三振で完投勝利。過去16奪三振以上の最年少記録は1968年に江夏豊(当時阪神)が16奪三振を果たしたときの20歳2カ月。この記録を2カ月更新する最年少記録となった。
クライマックスシリーズ(CS)の初戦で先発投手を任された大谷は、2連続押し出しなど苦しい投球ながらも要所を締めてCS初勝利。20歳3カ月での勝利投手は、2009年に田中将大(当時楽天)が記録した20歳11カ月を更新するCS史上最年少記録となった。
これらの活躍が認められ、侍ジャパンには藤浪晋太郎(阪神)とともに、最年少での代表入りを果たしている。
ここからは「数字」では測れない点について。シーズン中も、そしてクライマックスシリーズでも、大谷が登板した試合では、たとえ大谷が打ち込まれても、チームが逆転してくれて負け投手にならない、という展開が多かった。これは、昨年の田中将大を彷彿とさせる「勝ち運」ともいえる。
また、上述したバースデー弾をはじめ、オールスターや稲葉の引退試合での162キロ連発など、衆目が集まる試合で結果を残せるようになったのが、大谷の一番の進歩ではないだろうか。注目される場で活躍する、それこそがスターの条件だ。
20歳にしてこれほどまで大きなインパクトを残した大谷。だが、トレーニングによって体はまだまだ成長の途中だという。
今年に行った『中学野球太郎Vol.4』のインタビューでは、「僕の体はまだ、そんなこと(二刀流のどちらで行くべきか)を言える基準に達していないと思います。まずは野球選手として、アスリートとしての基本的な体、しっかりと動く体を作ろうというテーマでやっています」と語った大谷。アスリートとしての基礎的能力が身に付いた先に、どんな図抜けた結果を見せてくれるのか。今から来季以降の活躍が楽しみでならない。