才能を発揮しきれていない未完の大器を紹介する本企画『君はこんなもんじゃない!』。今回は「マニア層」から注目を集める坂本誠志郎(阪神)にスポットライトを当てたい。
履正社高、明治大を経て、2015年のドラフト2位で阪神に入団した坂本誠志郎。同年の1位は坂本と同じ明治大の高山俊で順当な評価だったが、坂本に関しては、やや過大評価と見る向きもあった。
坂本は侍ジャパン大学代表に選ばれる実力の持ち主だったが、ドラフト2位にしては、打撃が弱点だった。東京六大学リーグで8季出場したが、打率3割を超えたのは、3年春の1度だけ。通算打率.231はあまり見栄えのする成績ではない。
侍ジャパン大学代表で4番も務めた梅野隆太郎でも、2013年のドラフト4位で阪神に入団。それに比べれば、かなり見劣りしたことは事実だ。
のちに評価される守備も「インサイドワークに長けた」というありふれたフレーズに収まり、高校、大学、侍ジャパン大学代表でキャプテンを務めたことから「キャプテンシーが魅力」とザックリまとめられた。いわゆる、評価の難しいなかで絞り出された魅力だった。
表面上の数字を見れば「過大評価」だったかもしれない。しかし、坂本は徐々にマニアに知られる存在になっていった。
その武器はキャッチング技術である。ワンバウンドを逸らさないのは当然だが、フレーミングの技術が飛び抜けている。フレーミングとは、ストライクゾーンギリギリのきわどいボールをストライクにする技術のこと。「ミットを寄せればいいだけでは?」と感じるかもしれないが、露骨すぎると審判に見抜かれてしまう。
坂本の場合、極めて自然なフレーミングであり、投手のみならず、テレビを通して見ている我々ですら心地よく感じるレベルだ。
プロ入り後4年間でわずか105試合の出場だが、評価しにくいはずの守備能力でここまでの高評価を得ている捕手は非常に珍しい。一目でわかるほどのセールスポイントなのだ。
さすが、追っかけ回して見てナンボのスカウトが選んだ素材。確かにドラフト2位に相当する圧倒的な守備力だった…!
現状、坂本は2番手捕手の座はキープしたといってもいい。しかし、坂本にとっての試練は、正捕手の梅野隆太郎もフレーミングに長けており、2年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞していることだ。
コアファンの間では「梅野も上手いが、坂本はさらに上手い」と言われている。だが、梅野はそこそこの打力があり、代打を出されて引っ込む展開もあまりない。
そこで打力向上が第一課題であるが、専属捕手のテリトリーを増やしていくこともひとつの手だ。持ち前のキャプテンシー、コミュニケーション能力を生かして、「俺は坂本がいい!」という投手を増やせば、出場機会は必然的に増えていく。
坂本の出番が増えれば、これまではマニア層しか語らなかった捕手の守備、フレーミングという観点にもスポットライトが当たることは間違いない。
「梅野か坂本か」。今季は守備だけではなく、阪神の第一捕手を巡る議論が活発になることを願いたい!
文=落合初春(おちあい・もとはる)