履正社高時代、岡田龍生監督は同校の先輩・T-岡田(オリックス)と比べ、山田に対して「もったいない」と常々感じていたという。T-岡田は入学当初から「プロ入り」とうい目標を明確に持って練習に取り組んでいた。しかし、2年生までの山田はそうではなかった。
山田は副キャプテンを断っていたというほど、「責任」から逃げていた。
しかし「プロに行く」と目標が明確になった途端、山田の取り組み方が180度変わったという。その結果、40度の高熱にもかかわらず、迷惑をかけたくない一心で出場した大阪大会のPL学園戦では、9回に同点打を放ち甲子園出場を手繰り寄せた。それほどまでに山田は変わったのだ。
レギュラーシーズンのヒーローインタビューでも常に謙虚なコメントを発する山田は「持っている男」でも「神ってる男」でもない。
開幕前のインタビューでは「開幕したくない」「活躍できなかったらどうしよう」と、不安を口にするほどの心配性。常に不安と戦い、どんなに好成績を残しても必ず試合前に11種類のティーバッティングを行う努力の男だ。そして、胸に秘めた思いを試合にぶつけ、結果を出していく。
山田はコメントではなく結果で示しているのだ。
先のオールスターゲームで、山田はホームラン競争で敗れた。試合でもノーヒット。「持っている男」の活躍ぶりは発揮できなかった。
やはり、山田は「持っている男」ではなく「背負っている男」なのだ。後半戦の山田はケガで離脱している仲間の想いを背負い、さらなる活躍をしてくれるはずだ。
山田が見ているのは三冠王やトリプルスリーではない。山田が背負っているモノの先にあるのは個人記録ではなく、チームの勝利、そしてCS出場なのだ。
文=勝田 聡(かつた さとし)
松坂世代のひとつ上にあたりサッカーの黄金世代となる1979年生まれ東京育ち。プロ野球、MLB、女子プロ野球、独立リーグと幅広く野球を観戦。 様々な野球を年間約50試合現地観戦し写真を撮影する。プロ野球12球団のファンクラブ全てに入会してみたり、発売されている選手名鑑を全て購入してみたりと幅広く活動中。