6月19日に開幕したNPBでは無観客で試合が行われている。現地で声援を送りたくても今は我慢の時。7月中旬以降に観客を入れての試合へと移行するまで、その熱量は取っておきたい。現地に足を運べないからこそ、現地に観客がいないからこその楽しみ方もある。今回はその楽しみ方を紹介したい。
この数カ月間でテレワークが身近になった。その一つの立役者とも言えるのがWeb会議サービス「Zoom」の存在だろう。Zoomは、簡単に言うとテレビ電話のような仕組みで、インターネットが通じていれば、顔を見ながら複数人と会話をすることができる。
今までは顔を合わせて行うのが当たり前であった会議や、ちょっとした打ち合わせはもちろん、インタビューにもZoomは使われている。
このZoomを用いて自宅にいながら、友人同士であたかも隣にいるかのような合同観戦を行っているファンもいた。それぞれが自宅で思い思いのユニフォームを着て、ドリンクやフードを自身で用意しテレビやインターネット配信を見ながら野球観戦をする。
パソコンやスマートフォンの画面上ではあるが、喜びや落胆も共有できるというのは新しい楽しみ方だろう。試合が終わった後、反省会にもスムーズに移行できるのもおもしろい。終電を気にしなくていいのもメリットの一つ。ただ、時間の区切りがなくなり、それがデメリットになる可能性もあるが…。
自宅観戦は一人でするものという常識が覆されたと言えるだろう。
野球が行われている現地まで足を運びたくなるというのが野球好きの性でもある。
不必要に球場の周りをうろついたり、入待ち出待ちをすることはよくないが、合法的(球場周りをうろついても違法ではないが…)に試合を間近で見る方法がある。屋外球場に限られるが、近隣にあるホテルの上階からの観戦である。シカゴ・カブス(MLB)の本拠地リグリーフィールドでは、通常時からそのような観戦スタイルも一般的になっている。
たとえば神宮球場は三塁側に日本青年館ホテルがあり、一部の客室からはスタンドを眺めることができる。ノートPCやスマホ、タブレットなどを用いて実況を聞きながら試合の雰囲気を味わうことが可能だ。SNSなどをチェックすると、「ステイルーム」で観戦を楽しんだファンも多くいたようだ。
日本青年館ホテルの公式アカウントでも、同ホテルで野球観戦を楽しんだファンの投稿を拡散しており、好意的に受け止められているようだ。
こういったいつもとちがう観戦方法も楽しみ方の一つである。もちろん社会のルールを守ることが大前提であり、三密になる可能性のある方法はNGだ。
テレビやインターネット配信で観戦することになるわけだが、現地に観客がいないこともあり、例年とは「音」に大きな違いがある。当たり前のように流れていた応援歌もなく、選手名のコールも響かない。拍手もなく好プレーがあっても球場は静かだ。その静かさに実況の声がベンチでも聞こえるという自体が起こったほど。
こういうときだからこそ「音」を楽しむのも一つ。ボールがバットにあたる音、ミットに収まる音、選手たちの掛け声もそう。一球ごとにベンチから声が出ているのも新鮮だ。普段はあまり聞こえない音が画面越しでも伝わってくる。
今は、毎日が球音を楽しむ日なのである。解説者によると、ホームランバッターとそうではないバッターとでは、ボールがバットにあたる音が異なるという。普段は聞き分けることができなくても、この静けさの中なら素人でも違いがわかるかもしれない。
7月に訪れるであろう入場解禁。その日までそれぞれの方法で野球を楽しみたい。
文=勝田聡(かつた・さとし)